【立川・6億円強奪事件】お客に余計なことを言ってしまったばかりに……逮捕された美容師が法廷で語った「後悔と反省」

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幻の“現金輸送車襲撃計画”

 こうして上田は美容室の客に、不満だけでなく会社のずさんな警備体制までペラペラと話すことになるのだが、当初、上田がこの情報を話したのは進藤ではなかった。実は、立川6億円強奪事件が起こる前に、それとは別の、幻と消えた“現金輸送車襲撃計画”があったのだ。被告人質問で上田は経緯をこう明かした。

「2005年末か翌年の初旬に、友人のNがドレッドをかけにきた。ドレッドは4時間くらいかかるんで、会話の一つとして、先程のようなことを話すと、Nも『とんでもない会社だねー』と言っていました。彼の知り合いに警察がいるので『自分と組んでいる人は飲酒運転の常習犯で、会社はアルコール検査もしない。ルートを教えるので検問を張れないか』と言いました。警備員は襲われた時に抵抗しないよう教育を受けていることや、車に無線機がついていないことなども話すと『そんなんだったら、“やれる”んじゃないの』と盛り上がった」

 美容室での雑談として、冗談交じりに強盗や検問の計画を妄想してひと盛り上がり……、では終わらなかった。Nは本気でこの警備会社の現金輸送車を襲撃する計画を立ち上げたのだ。実際、上田を含めた数人で、たびたび話し合いをしていたという。ところが、先述した通り、2008年に杉並区で同社の現金輸送車から金が盗まれる事件が発生。警戒が強まると予想してか、計画は“事務所での現金強奪”に変わっていく。上田は公判で次のように話していた。

「金庫室の暗証番号をNに伝えたが、これは使わず、宿直の警備員を脅して聞き出すように言いました。番号は単純だったので、いくらだらしない会社でも変えているだろうと思ったからです」

 のちにNは、友人の進藤も計画に招き入れた。上田は事務所の見取り図などを書いて彼らに渡したという。Nをリーダーとする現金強奪計画は、6億円強奪事件の2年前に持ち上がっていたそうだが、このときすでに、上田は「事務所の鍵が壊れている」ことも伝えていた。これを受け、Nと進藤は事務所の下見まで行っていたものの、計画は立ち消えに。リーダーのNを差し置いて、進藤が自分の人脈を使って計画を進めていたからだった。

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