寝たきり老人を激減させた「奇跡の村」 102歳医師が明かす「死ぬまで元気」の秘訣
50人いた寝たきりが2人に
こうして、死が目的だった「満足死」は、いかに老化を遅らせて元気でいるかという「生」が目的になったのである。
寝たきりの人を診察すると、病気というより、寝るより楽なものはなしと寝続けているうちに寝たきりになるケースが多かった。そこで疋田さんは往診のたびに、タンスの引き出しや掘りごたつを利用したリハビリを指導していった。人は目標を持って自分の物語を描くことができれば、自ら努力する。そこで患者の本音を聞き出しながら、リハビリの動機付けになる目標を次々と提案していった。それを2年間繰り返していると、それまで疋田さんの往診エリアに50人いた寝たきり老人は5人に減り、翌年には2人と限りなくゼロに近づいたのである。
同じスピードでもウオーキングよりジョギング
さて疋田さん自身の健康法だが、真っ先に思い出すのは早朝のジョギングである。ただ住民から「あれは走ってるのかね。ふらふらしながら歩いているが」と言われていた。それを確かめようと、夜明け前に走るコースで疋田さんを待っていた。やがて上半身裸の人影がぺたぺたと足音を立てながら近づいてきた。たしかに格好は走っているが、ほとんど歩くのと同じスピードだ。2キロの距離を20分かけて走るのだという。ただ、そのときの記憶で今も印象に残るのは、ほっそりとした体形なのに、ふくらはぎが運動選手のように盛り上がっていたことである。当時、疋田さんは83歳。年齢を感じさせないたくましい筋肉に、私は圧倒されてしまった。
ジョギングは50歳で佐賀町に来てから毎日続けているそうで、私は「歩いたほうがいいんじゃないですか」と笑った。すると彼は、これでいいという。
同じスピードでもウオーキングに比べてジョギングの方がよりダイナミックに多くの筋肉を動かす。だからといってジョギングが絶対にいいかというと必ずしもそうではなく、どちらを選ぶかはその人の体力に合わせるべきで、「ちょっときついな」と思うぐらいがいいそうだ。無理な目標を定めると、途中でギブアップしてしまう。大事なのは頑張るのではなく、疲れを残さず継続させることなのだと言った。
[5/8ページ]