寝たきり老人を激減させた「奇跡の村」 102歳医師が明かす「死ぬまで元気」の秘訣

ドクター新潮 ライフ

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農村に元気な高齢者が多い理由

 転倒しなくても、筋肉量は加齢と共に必ず低下していく。放っておけば頭や背骨を支えきれなくなって腰痛などが頻発し、歩くのもおっくうになるから、さらに筋力が低下する。そうならないためには、運動能力のある細胞を活性化させて生命維持の細胞と同時に衰えていくようにするしかない。それには常に筋肉に負荷をかけてやることだ。そのことに疋田さんが気付いたのは、佐賀町にやってきてからだった。

 この町の産業構造は単純で、農業中心の山間部と漁労中心の市街地に分かれていた。高齢化率は山間部の方が高いが、長期入院患者数と特別養護老人ホーム入所者数は市街地の6分の1と少なかった。逆に90歳以上で元気な高齢者は市街地の3倍もいた。つまり農村地帯のほうが健康な高齢者が多かったのである。なぜか。

「死ぬまで働け」という結論

 市街地の漁師らは比較的高給取りが多く、退職して陸に上がると、せいぜいゲートボールをするぐらいで体を動かさなくなる。一方の山間部の農家は収入が少ないから、高齢になっても畑仕事をしながら自分の食べる野菜などを作っていた。つまり体力に合わせて毎日働いていたのである。働くとは体を動かすことだ。

 老化は筋力の低下から始まるといわれるが、農家はコンスタントに体を動かすことで無意識に筋肉に負荷をかけ続け、その結果として老化を遅らせ、寝たきりにもならずに元気で過ごす人が多かったのだ。

 幸福度は個人によって違うが、少なくとも「幸せは健康度に比例する」のではないかと疋田さんは考えた。そして「元気で死にたいと思ったら、死ぬまで働くことだ」という結論を導き出したのである。「働け」という言葉に抵抗があるなら「全身の筋肉を動かせ」と言い換えてもいい。

 住民と膝を突き合わせながら、疋田さんは当時こんなことを説いていた。

「若いときは金のために働いても、年を取ったら健康のために働きなさい。ボランティアでもやってみんなに喜んでもらったら気分がよろしい。するとその人の人生はさらに充実してより健康になります」

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