最後に頼りになるのは神様? 次期「米大統領選」は若年層が大きなカギ その行動様式に異変
着実に影響力を強めている若年層
バイデン米大統領は4月25日、2024年の大統領選挙で再選を目指すと正式に表明した。「野党・共和党の最右翼であるトランプ前大統領と戦えば再び勝てる」との腹積もりがあると言われている。
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だが、バイデン氏再出馬への反対は根強い。AP通信等が実施した世論調査によれば、民主党支持者でも過半数が不出馬を望んでいるという。米国のテレビネットワークNBCが実施した調査では「バイデン、トランプ両氏の再戦シナリオについて米国民の70%以上は嫌気がさしている」ことも明らかになっている。
閉塞感が高まる米国政治の中で、着実に影響力を強めているのは若年層だ。
昨年11月の中間選挙で共和党の躍進を阻止したのはZ世代(1990年代後半から2010年代前半に生まれた若者達)だった。彼らの多くが人工妊娠中絶の権利などを求めて民主党に積極的に投票し、事前の予想を覆す結果をもたらした。
次期大統領選挙でも人工妊娠中絶の問題は大きな争点になる見込みであり(4月27日付日本経済新聞)、大学生にとってもこの問題はトップ・イシューのままだ。
米国の世論調査・コンサルティング企業のギャラップ等が実施した世論調査によれば、4分の3近くの大学生が「『性と生殖についての権利』に関する州法が、自分の学校に在籍し続けるかどうかの判断に影響する」と考えているという。リベラル色が強い大学生が若年層のオピニオン・リーダーの役割を果たしていることから、中絶の問題を追い風に、民主党が有利に大統領選を戦えるとの見方がある。
だが、足元で注目すべき現象が生じている。「学歴社会」の傾向が強い米国で、特に若年層の間で「大卒」の価値が揺らいでいるのだ。
“大卒懐疑論”の要因は学費の高騰と人手不足
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)等が今年3月に実施した世論調査によれば、学生ローンの重い負担などを理由に、55%が「4年制大学の学位には価値がない」と回答した。「良い就職や収入増につなげるために価値がある」と考えている割合は42%にとどまったという。「価値がない」と答えた比率は男性が女性よりも高く、年齢別にみると18歳から34歳までが最も高かった。
2013年の調査では、同じ質問で「価値がある(53%)」が「価値がない(40%)」を大きく上回っており、この10年間で大卒への懐疑論が高まったことがみてとれる。
その要因として挙げられるのは学費の高騰に加え、足元の深刻な人手不足だ。
米国の3月の失業率は3・5%と歴史的な低水準にあり、働き手を確保するために求人の際に学歴を不問にする動きが広がっている。
企業が18歳未満の労働力を確保しやすくする州法の改正も相次いでいる(4月26日付日本経済新聞)。「貧困層を中心に児童の学業に支障をきたす恐れがある。若年層の所得低下が進むリスクがある」との懸念の声が上がっているが、移民受け入れ制限などによる人手不足が深刻なため、背に腹は代えられないのが実情だ。
直近の例としては、アーカンソー州が今年3月、14歳以上16歳未満の未成年が州の労働省から了承を得ずに働けるようにする法律を成立させた。
「米国では学歴の高い州では中絶を容認し、学歴の低い州では中絶を禁止する傾向がある」との指摘がある。「大卒」軽視の風潮は、若年層の間で中絶に厳しい共和党に対する支持の動きが出てくるのかもしれない。
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