躍進が続く「維新」 立民と「血を流す闘い」も辞さない戦略と、「吉村総理」カードを切るタイミング

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候補者の粗製乱造とならないか

 ただ、これから維新が進む道のりは決して平たんではない。馬場伸幸代表は「すべての選挙区に候補者を立てる」と息巻くが、早期解散の可能性が高まる中でどこまでやれるのか不透明だ。現在「維新政治塾」で塾生を募集し、候補者の発掘を急いでいるが、慌てれば粗製乱造となる恐れがある。藤田文武幹事長は4月24日の会見で「早く解散を打ってくるなら、自公の維新つぶしだと捉える」と焦りを滲ませた。

 さらに候補者を立てたとしても、近畿、東京などを除いては選挙戦で手足となる地方議員がいない地域がまだまだ多い。例えば統一地方選の対象となった41の道府県議選では、愛知、岡山など半数を超える24県で未だに県議0。青森や山口など11の県にはまだ党支部すらない。候補者は「空中戦」を余儀なくされ、風頼みの厳しい戦いとなるのは間違いない。

 一方、急ピッチの候補者選定が続く中で、参議院東京選挙区選出の音喜多駿政調会長など、参議院議員の衆議院への鞍替えも検討されている。音喜多氏は周囲に「党が勝負する時に、執行部の自分が勝負しないわけにもいかない」と語っている。

 また維新関係者によると、立憲民主党など他野党の地方議員や立候補予定者からの問い合わせも複数来ているという。ある立憲の候補者は取材に対して「いま維新に移ろうとは思っていないが、脳裏をよぎるのは確かだ」と吐露した。今後は野党間での候補者の綱引きも激しくなることが予想される。

攪乱者か、改革者か

 これまでも政治の第三極は生まれては消えを繰り返してきた。ただ、時代は移り変わっている。業界団体や労働組合、宗教団体など既存の組織を支持母体に持たない維新のような政党が、新しい視点の政策を打ち出し、今の多極化した社会で支持を集めていくのかは注視する必要がある。

 また大阪に基盤を置いたままで、どこまで全国に根をはれるのかは一つの実験だ。地域色の強さが敬遠される可能性はあるし、「東京に対するライバル心でやっている」と見られては、幅広い支持は得られないだろう。また維新の議員からも「東京に第二党本部でも作ってくれないと、霞が関と向き合った政策立案や国会対応がまともにできない」という切実な声も上がっている。何よりも維新が、広く国民のためになる政治を行うことができるのかが、より厳しく問われることになる。

 日本維新の会が巨大与党に漁夫の利を与える野党の攪乱者に終わるのか、既存政党の閉塞感を打ち破る改革者になるのか。いずれにせよ、日本政治の行方に大きな影響を与えることになるだろう。

青山和弘(あおやま・かずひろ)
政治ジャーナリスト 星槎大学非常勤講師 1968年、千葉県生まれ。元日本テレビ政治部次長兼解説委員。92年に日本テレビに入社し、野党キャップ、自民党キャップを歴任した後、ワシントン支局長や国会官邸キャップを務める。21年9月に独立し、メディア出演や講演など精力的に活動している。音声プラットフォーム「voicy」で永田町取材やメディア出演の裏話などを発信している。

デイリー新潮編集部

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