躍進が続く「維新」 立民と「血を流す闘い」も辞さない戦略と、「吉村総理」カードを切るタイミング
立憲と「血を流す闘い」を
その一方で、自民・公明の与党と対峙するには、野党勢力の結集が必要だという声は永田町には根強い。少なくとも一つの選挙区に複数の野党候補が乱立しないようにする候補者のすみ分けは、選挙戦略上有効だと考えられるが、維新幹部はこれを否定する。
「立憲とは一度、血を流す闘いをしないと、どんな協力をしても『野合』だと言われるでしょう。次の衆院選は自民党を利することになっても、可能な限り候補者を擁立して立憲とも闘う。それが比例票の掘り起こしになればいいんで、立憲とは考えが違うんです。そして、野党第一党を獲って初めて、維新を中心とした政権交代可能な勢力を作ることができます。(泉健太代表の)京都3区にだって立てられれば立てます」
こうした維新の姿勢に対して、立憲民主党は揺れている。党内にはできる限りに維新とのすみ分けを模索すべきだという声もあるが、「ここまで舐められて、もはや調整などありえない」という諦めムードも漂っている。そんな中、ある立憲幹部は全面対決に舵を切るべきだと主張する。
「維新との選挙協力は、こちらから願い下げだと言わないとだめだ。弱気になっていたら票は出ないから、立憲もどんどん候補者を立てないと。維新は自民党の票も食うんだから、三つ巴でも勝機はある」
風前の灯の野党共闘。これに対して、統一地方選直後は「維新の勢いは脅威だ」と語っていた自民党幹部も、「維新と立憲が政権批判票を奪い合ってくれれば自民党に有利だ」と余裕の構えを見せ始めている。衆院選では、維新が自民公明支持層からもどれだけ票を奪えるのかが、選挙の帰趨を決める焦点となる。
“吉村総理”カードをいつ切るか
勢力拡大を目指す維新にとって、最大のカードは吉村知事の存在だ。今回の統一地方選では、前半戦には松井一郎前代表(前大阪市長)が応援演説に出向いたが、前半戦終了と共に党顧問から退き、後半戦の応援は吉村氏に任せた。党幹部は「統一地方選の躍進で松井さんがいなくなる不安を払しょくして世代交代のメッセージを出せた。これで橋下・松井待望論は鳴りを潜め、吉村人気は橋下を超えたと思う」と語る。
そして、吉村氏に近い維新議員はこう話す。
「吉村さんは2025年の大阪万博までは府知事を辞めるわけにはいきませんが、その後は分かりませんよ。今回の選挙で府議会・市議会双方で過半数を獲得して大阪で達成すべきことは達成しました。吉村さんはこれまで国政進出を否定してきましたが、統一地方選を経て雰囲気が変わってきたのを感じる。次の次の衆院選で勝負をかけるなら、総理候補として担ぎ出すこともあり得ると思います」
今、永田町では人材不足が叫ばれ、国民の期待を集める次世代のリーダーがなかなか見当たらない状況だ。シナリオ通りに進むかはまったく未知数だが、吉村氏が現段階でいいポジションにつけていることは間違いないだろう。
[2/3ページ]