躍進が続く「維新」 立民と「血を流す闘い」も辞さない戦略と、「吉村総理」カードを切るタイミング

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 統一地方選挙で躍進した日本維新の会。共同代表を務める吉村洋文大阪府知事は記者会見で「今後、全国政党を目指すなら、党本部を東京に移した方いいのでは」という質問が飛ぶと、顔色を変えた。

「その考え方自体が永田町的だ。勘違いで、ちゃんちゃらおかしい」

 そして、「党本部の移転で自民党に対峙できる全国政党ができるとは思わない。地方で実績を積んで、その価値観を中央にぶつけていく」と語気を強めた。

 大阪発であることへの拘りと強烈な自負心。日本維新の会が今の勢いのまま野党第一党、果ては政権交代をうかがう勢力になり得るのか。その戦略と本音を取材した。【青山和弘/政治ジャーナリスト】

メディア効果で増した勢い

 4月9日と23日に行われた統一地方選挙は、「維新躍進」が大きな見出しとなった。地方議員と首長の数が、目標の600人を大きく超える774人に上ったこともさることながら、衆参5つの補欠選挙で、唯一、自民党候補を破ったのが和歌山1区の維新候補だったことも目を引いた。維新の幹部は、「政権に対する不満の受け皿として認知されてきた」と自信をのぞかせる一方、今回はメディア報道との相乗効果で勢いが増したと率直に語った。

「前半戦の奈良県知事選での勝利などを受けて、メディアに『維新躍進』という見出しが躍った影響は大きかった。有権者にその意識が植え付けられて、和歌山1区補選など後半戦の候補者はだいぶ助けられた」

 この流れは今も続いている。4月29・30日の共同通信の世論調査で、日本維新の会の政党支持率は前の月より7.2ポイントも上昇し、12.2%に上った。これは7.6%の立憲民主党を大きく引き離している。他の世論調査でも同様の傾向がみられる。

「負の歴史」の教訓

 そんな維新の、次期衆院選での戦略はどのようなものなのか。自民党の一部には2017年の希望の党のように野党再編を仕掛け、一気に政権交代を狙ってくるのではないかとの警戒感もある。しかし、党幹部に問うと、次の目標はあくまで「今の態勢で野党第一党を獲ること」だと話す。

「一気に勢力を拡大しようとしないで着実にいきます。無理をすれば必ず反動がくる。維新の『負の歴史』は繰り返しません」

 維新幹部が繰り返したくないと強調する「負の歴史」とはどういうものか。

「日本維新の会」は2010年に橋下徹大阪府知事(当時)らが作った地域政党「大阪維新の会」が原点だが、その後、国政政党を目指すに当たって2012年の石原慎太郎氏率いる「太陽の党」との合流、2014年の江田憲司氏らの「結いの党」との合併など、他党との合従連衡を繰り返した。

 しかし、どの試みも結局は党分裂につながり、ことごとく失敗に終わった。そして2015年に大阪組が純化する形でできた「おおさか維新の会」が、今の「日本維新の会」の原型となっている。この離合集散の歴史は、今の維新に強烈な教訓として存在する。本文冒頭で紹介したように吉村共同代表が大阪発の政党に拘るのにも、二度と自分たちのアイデンティティーを失う妥協はしたくないという思いが見て取れる。

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