山本由伸や今永昇太も秒読み!? 主力のメジャー移籍で「危ない球団」「安泰な球団」

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防御率リーグトップの西武も安泰か

 もう1チーム、投手陣が充実しているのが、西武だ。昨季もリーグトップのチーム防御率2.75を記録したが、今年も変わらず高水準を保っている。中でも、今季から先発に転向した平良海馬が存在感を示している。

 4月19日には疲労を考慮されてか、一度調整のために登録抹消となったが、それまで3試合に登板して2勝0敗、防御率1.89と安定した投球を見せている。本人の強い希望で先発転向となった経緯はあるものの、結果的に「ポスト高橋」の最有力候補がチーム内から見つかったという格好だ。

 このほか、松本航と今井達也といった実績を持つ先発が揃い、2年目の隅田知一郎が昨季から続いていた自身の連敗を12でストップさせるなど、今季の飛躍を感じさせる。さらに、平良が抜けたリリーフ陣では、隅田と同じ2年目の佐藤隼輔が、低い防御率をキープして、穴を埋めている。ここ数年は、力のある投手を積極的にドラフトで獲得し、平良や昨年ブレイクした与座海人、水上由伸のように、ドラフトの下位指名選手や育成選手から、一軍の戦力になる者を引き上げている点は見事である。

“投壊”に歯止めがかからない球団も

 一方で、心配なチームが、DeNAと日本ハムだ。DeNAは、ここまで首位争いを演じており、怪我に苦しんでいた東克樹の復活は大きいとはいえ、先発投手陣の顔ぶれは、30歳前後の選手ばかりで、若手は“皆無”という状況になっている。それに加えて、二軍を見渡しても、今後数年で先発に食い込んできそうな若手が見当たらないことだ。

 期待値が高いのは、2年目の小園健太だが、キャンプ、オープン戦から結果を残すことができず、二軍でも苦しい投球が続く。小園と同じ年のドラフトで指名された徳山壮磨や三浦銀二も目立った活躍はできていない。山下や平良という高卒で若いエース候補がいる、オリックスや西武と比べると、今永が抜けた時のインパクトは大きくなる可能性は高いだろう。

 それ以上に不安なチームが日本ハムだ。ドラフト2位ルーキーの金村尚真が順調なスタートを切った点は好材料だが、肩の違和感を訴えて、二軍調整となっている(4月25日現在)。また、昨季10勝を挙げた伊藤大海は、WBCに参加した影響もあってか、成績を大きく落としており、“投壊”に歯止めがかからない状況となっている。

 若手では、高卒3年目の根本悠楓、大卒2年目の北山亘基らの飛躍が期待できそうな一方で、吉田輝星や河野竜生、立野和明らドラフト上位指名した投手が軒並み停滞している。手薄な投手陣から上沢が抜ければ、チームの低迷が長引く危険性が高そうだ。

 WBCで活躍した村上宗隆(ヤクルト)や佐々木朗希(ロッテ)、高橋宏斗(中日)らも順調にキャリアを重ねていけば、数年後にメジャー移籍という話が出てくる可能性は極めて高い。こうした状況を踏まえて、ヤクルトは昨年のドラフトで強打者タイプを多く指名し、沢井廉と北村恵吾は1年目から二軍でも結果を出している。球界を代表するような選手が出てきたら、すぐにメジャー移籍に備える――。より先を見据えた編成が、今後より一層重要になってくることは間違いない。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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