モーツァルト、ベートーベンが愛した「絶品ビフテキ」とは? 温泉エッセイストが厳選した「おいしい温泉ごはん」

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“源泉仕込み”の「温泉食パン」

 霧島温泉郷は、日本で初めて国立公園に指定された、雄大な霧島連山の南西に点在する温泉地を指す。標高600~850メートルの間に丸尾温泉や西郷隆盛が愛した日当山(ひなたやま)温泉、妙見(みょうけん)温泉など九つの温泉地があり、泉質もバラエティに富む。

 ちなみに丸尾温泉「旅行人山荘」は源泉2本を所有するので、同じ宿にいながら、「単純泉」と「硫黄泉」の入り比べができる。

 そんな温泉郷にあるパン屋さん「ブランジェリ ノエル」は天然酵母の使用を掲げ、目玉商品は「ひなた山温泉食パン」。人が良さそうなご主人の津崎清二さんが出迎えてくれた。パンを作るには小麦粉と水と塩が必要だが、水のかわりに温泉を使おうと思ったそうだ。

「温泉と小麦粉との相性が本当に難しいんです。温泉成分によって硬くなったり、パサついたり。例えば炭酸成分が多く含まれると、膨れすぎてしまいますが、重曹が入っているとわりとうまくいきました」(津崎さん)

 前述のとおり湯の郷・霧島には豊富な源泉がある。「各地の温泉をさんざん試してみて、結局、もっちりふっくらに仕上がったのが、うちの店の隣にある日当山温泉の源泉でした」と満面の笑みの津崎さん。

 その後も改良を重ね、安定して温泉食パンを作れるように、あらかじめ小麦粉と温泉を配合したパンの元「湯だね」も開発した。

 今では、お茶風味の食パンもラインナップに入る。お茶が入った萌黄色の生地の食パンを試食すると、お茶の香りが鼻に抜ける。かみしめると甘味が溢れ出す。かみ終えると、お茶の渋味が残った。やわらかな食感と甘味のみが記憶に残るいつもの食パンと比べると、なんて斬新なんだ!

“世界最大の温泉プール”とビッグな「USAビーフ」

 アメリカ・コロラド州の「グレンウッド・ホットスプリングス・リゾート」には世界最大の温泉プールがある。

 子供用のプールは長さ123メートル、幅30メートル。大人たちが寛ぐプールは長さ30メートル、幅12メートル。この二つのプールは仕切りはあるものの、ひとつの菱形を成している。

 温泉の温度は子供用は32度、大人用は40度だった。かのセオドア・ルーズベルト大統領が入浴したプールとしても知られる。

 夕食は、ルーズベルトが常宿とした「ホテル・コロラド」近くの飲食店街で。赤身ステーキを注文した。焼きはミディアムレア。肉の塊がどんと出てきた。

 やわらかい。うまい。ソースにはハラペーニョが入っていて、スパイシーさが舌に残る。大きなステーキも、飽きずに食べられたが、さすがに一皿をひとりで食べたわけではない。同行してくれたガイドのUさんと分けてちょうど満腹。

 隣にはクラフトビール専門店があった。Uさんいわく「コロラド州ではクラフトビール全米大会が開催されるんです。スパイシー、ハーブ、チョコレート風味なんかもあります。これも山々からの新鮮で豊富な水があるコロラド州ならではの名物です」。

 景観も温泉もクラフトビールも、全てはアメリカンロッキーの恩恵だった。

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