日本人だけが今もマスクを外せない 欧米との差を生んだ理由は「言語」にあった
3月13日から政府の方針で、マスク着用は個人の判断にゆだねられることになり、直後の3月18日と19日、朝日新聞社が全国世論調査で、「あなた自身はマスクを着けることが減ったか、減らなかったか」と尋ねている。その結果は「減った」という返答が23%にすぎず、「減らなかった」と答えた人は74%におよんだという。
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3月13日を迎えるのに先立ち、NHKも2月10日から3日間、世論調査を実施して尋ねていた。そこでは、マスクを「引き続きつけると思う」と、いわば強い意志を示した人が50%で、「外すことが増えると思う」が38%。「常に外すと思う」はわずか6%だった。
同時期に行われた類似の調査でも結果は同様で、日本ではマスクを外すことへの抵抗感が強く、政府がどう言おうと外さない人が多いのがわかる。
ある調査によると、マスクを外せない理由としてコロナへの感染を防ぐという以外の目的を挙げる人が目立つ。ほかの病気への感染リスクを防げる、というのは、花粉症なども深刻なのでわかるとしても、顔を見られたくない、恥ずかしい、自信がない、など後ろ向きの理由が多く挙がっているから心配になる。
それはマスク依存症にまっしぐらの意識ではないだろうか。人前でマスクを外して顔を晒す自信がない、顔を見せると不安になる、という人が増えているということは、すなわち他者と親密な関係を築けないことにつながる。社会的な負の影響がきわめて大きいといわざるをえない。
世界で日本だけが特殊な状況
私は3月に1週間ほどイタリアに滞在したが、外を歩いていてマスクを着用している人を見る機会は滅多になかった。屋内では着用者が若干増えるが、ごく少数であることには変わりなく、その状況は公共機関などでも同様だった。
むろん、イタリアが特殊なのではなく、欧米各国どこに行っても同様だと聞く。いや、欧米にかぎらない。日本にいると気づきにくいが、世界中で日本だけがあまりにも特殊な状況なのである。
その理由として、日本人はリスクを回避したいという欲求が他国の人とくらべて高い、と説明されることが多いが、それだけとは考えられない。
私は声楽家や声楽を志す学生と数多く交流しているが、そこで聞こえてくる声にこそ日本人がマスクを外せない根本的な原因があると思われる。それは言語や文化に深く根差した原因であるだけに深刻でもある。
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