知床事故「カズワン」社長がダイビング会社設立を計画か 逮捕、遺族への補償は未だなされず

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「荒唐無稽な話」

 ウトロやその周辺では渦中の桂田社長にまつわる仰天話が取り沙汰されていた。

「桂田さんがダイビング関連の会社を計画しているというものです。そこを拠点に、商売をしながら定期的に行方不明者の捜索に取り組むとか。周辺海域の調査も行って、地域の安全性を高めると言っているとも聞きました」(地元住民)

 主な客層が観光客という、営利目的のダイビングショップに捜索活動などできるのか。道内に住むベテランダイバーは首をかしげる。

「知床でも1年を通して潜ることは可能です。ウトロ側では分厚い流氷を下から眺める“流氷ダイビング”が一番人気。水温がマイナス1度でも、経験があれば1時間程度は潜れますが……」

 同じ潜水でもレジャーと捜索活動とでは、勝手がまったく異なると指摘する。

「岬の周辺は潮の流れがかなり速い。経験を積んだダイバーでも、海域の特性を理解していなければ危険です。桂田さんに本気で捜索をする気があるなら、事故の発生直後にプロの潜水士を雇って取り掛かるべきだった。いまから会社を作ったところで何ができるわけでもない。あまりに荒唐無稽な話ですよ」

あきれる地元の観光業者たち

 札幌在住のジャーナリストで、いまも事故の取材を続ける曽我部司氏も言う。

「桂田社長がダイビング会社を設立する話は、私もウトロで聞きました。どんな理由を掲げようとも、会社として手掛けるなら営利目的。私には観光船事業に代わる、新たな収入源の確保としか思えません」

 桂田社長はいずれ刑事被告人になる身。在宅起訴か、逮捕を経て起訴されれば、新会社の経営など立ちゆくまい。

「観光という知床最大の産業に深刻なダメージを与えながら、同じ場所で新規事業を画策する。彼にとってはしょせん、地域や被害者、そのご家族への謝罪や補償は二の次なんでしょう」

 40キロ離れたJR知床斜里駅周辺の観光業者もあきれ顔。

「ウトロの知人らも“彼にはもう、この町で商売をしてほしくない。ほとんどの町民がそう思っている”とボヤいていますよ」

 楽は一日、苦は一年。桂田社長の居場所は確実に沈没しつつある。

週刊新潮 2023年5月4・11日号掲載

ワイド特集「スティ・ゴールド」より

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