知床事故「カズワン」社長がダイビング会社設立を計画か 逮捕、遺族への補償は未だなされず

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例年なら予約でいっぱいのはずだが…

 とはいうものの、改めて1年もの月日が費やされている理由を尋ねると、

「何をもって時間がかかっていると定義するのか分かりませんが、他の事例では4年かけて捜査しております。この事件は遅い、遅くないというのはこちらでは分かりかねます」(同)

 開き直りにも聞こえるこの回答。まだまだ進捗を待つしかなさそうだが、ともあれ日本列島に新緑が芽吹き始めるゴールデンウイークがやって来た。冬場は豪雪とマイナス15度に達する寒波に見舞われる知床半島の住人たちも、毎年、観光客で賑わうこれからの時期を「グリーンシーズン」と呼んで待ちわびている。

「例年なら、連休中の予約はいっぱいのはず。ようやく営業を再開できますが、便数を減らしたのに現時点のお客様の人数は半分以下。問い合わせは増えてきましたが、実際に来てくれるかどうか……」(観光船業者)

 北海道に多いエゾヤマザクラの見頃は5月中旬とされ、ウトロには遅い春の訪れが近づく。それでも住民の表情は沈んだままだ。

補償は進んでおらず

 地元商工会関係者が言う。

「迷惑を被っているのは観光船だけではなく、ホテルや旅館、飲食店や土産物店も同様です。それでも桂田さんは謝罪しない。取材でウトロを訪れるマスコミ関係の人の多くも“桂田社長には誠意を感じない”と言いますが、私たちもまったく同じ意見です」

 その桂田社長は、昨年6月に宿泊施設を運営する有限会社の代表取締役を辞任していた。謄本を見ると後任には父親が就任している。

「事業の継続を心配して、対外的な印象の悪さを気にしたのかもしれませんね。一部には“被害者からの損害賠償請求を念頭に置いた資産隠しのためではないか”と疑う声もありますが」

 ところで賠償は進んでいるのか。被害者家族ら28人が参加する、知床観光船事件被害者家族会の山田廣弁護団長に話を聞いた。

「保険の内容次第ですが、運営会社が加入していたという船客傷害賠償保険は本件にも適用されます。上限が1人1億円ですから、ほとんどの方の逸失利益と慰謝料は賄えるはず。ただ、多くのご家族はいまだに賠償の話をする気にはなれないようで、話はほとんど進んでいません」

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