前田健太“いばらの道”でも譲れない「MLB残留」 広島と巨人のオファーは“後回し”のマネー事情とは

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ライバル「田中将大」とは雲泥の差

 15年オフに27歳で広島からポスティングシステムでドジャースに移籍した際、大詰めの身体検査で異常が見つかったとして契約は8年総額2500万ドル(約34億円)とベースが抑えられた。代わりに出来高部分が各年1000万~1200万ドルとベースの年俸の3倍程度にもなる異例の契約に。13年オフに同学年のライバル、田中将大がヤンキース入りした際の7年総額1億5500万ドルとは雲泥の差だった。

「前田は日本では沢村賞を2度も獲得した。当時、日本球界を代表していた投手で、今なら山本由伸(オリックス)クラス。身体検査では本当に異常があったか疑わしい中で、どうしてもメジャー移籍したかった足元を見られたように、ドジャース有利の契約を結ばざるを得なかった」(米大手マネジメント会社の代理人)

 その後、マリナーズにポスティング移籍した菊池雄星(ブルージェイズ)は3年総額4300万ドル、昨オフに海外FAでメッツ入りした千賀滉大は5年総額7500万ドルだった。日本投手では前田の条件の低さが際立っている。

 ドジャース入団後も、前田は毎年のようにチーム事情などから途中でリリーフに回される冷遇に遭った。20年開幕を前に先発を確約されたツインズにトレードで移籍すると「100対ゼロで先発の方がやりやすい」との言葉がドジャース時代のストレスを言い表していた。

NPB復帰には消極的

 心機一転で臨んだ20年はしかし、コロナ禍で開幕が延期された。それでも、60試合に短縮されたシーズンで6勝1敗、防御率2.70の好成績でサイ・ヤング賞投票は2位に食い込み、翌21年には開幕投手に抜てきされたのだが……。同年終盤、トミー・ジョン手術に至ったのだった。

「状況が好転するたびに良くないことが起きた。来オフのFAは大きな契約の最後のチャンス。何が何でもという気持ちは強いだろう。年数は短くても1000万ドル以上の年俸を目指すか、年俸を抑えてでも年数にこだわるか。『最後は日本で終わりたい』と話しているが、まだその時期ではないとみている」(同代理人)

 今オフの先発投手の需要は高い。目玉は二刀流の大谷翔平で、フリオ・ウリアス(ドジャース)アーロン・ノラ(フィリーズ)らが後に続く。前田はさらに後続のグループに属し、MLBで大型契約を結べるかどうかは不透明だ。

 仮に好条件での残留交渉が不調なら、NPB復帰プランが浮上する。その場合は古巣・広島が名乗りを上げることは確実で、今季も先発陣強化が進まない巨人など複数球団が触手を伸ばしてきそうだ。

 それでも、米球界関係者の話を総合すると、前田はNPB復帰に前向きではないという。

「田中が20年オフに楽天に復帰したのはアジア人差別が激しかったコロナ禍で、家族の安全に憂慮したところがあったほか、それまでに大きな契約を手にしていたことが大きかった。前田はそうではない。消化不良のまま日本には帰ってはこないのではないか」

 いばらの道を歩むMLB生活で、最後にバラ色のオフを迎えるための闘いは続く。

デイリー新潮編集部

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