「築地場外市場」でインバウンド客が激増、“路上飲み”“ごみ放置”で緊急対策の大わらわ

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早朝は「築地くらいしかやってない」

 場外が過去になないほどの大盛況となっている要因は何なのか。感染対策の規制緩和や円安のほか、場外の総合案内所「ぷらっと築地」のスタッフは、「SNSの一層の浸透に加え、都内の観光名所や有名店は朝早くからやっていないため、早朝から賑わう築地へ皆さん集まってくるのではないか」とみている。築地場外では、通勤・通学の時間帯には、既にどの店もオープンしており、来場者もウェルカム状態。たしかに、浅草の浅草寺やスカイツリー周辺などでは、この時間帯に開いている店は少ないであろう。

 これまでの薄商いを取り戻そうと、場外の店ではインバウンド受けする商品の提供が一層、来場者を引き寄せている。鮮魚店では、豊洲市場で仕入れた魚介を寿司店など和食店向けに販売するのが主な役割だが、一般客向けに店先で食べられるハーフサイズの海鮮丼や少量の刺し身を皿に盛り付け、リーズナブルな値段で販売する店もある。

 皿にちょこっと盛った本マグロやクエ、ヒラメ、カンパチなどの高級鮮魚を1皿500円で提供するのが斉藤水産。店先の狭いスペースで、数種類の刺し身をチョイスして立ち食いするのが「築地流」の楽しみ方だ。斉藤水産の店主は「せっかく日本へ来たんだから、自慢の魚を少しずつでも味わって帰ってほしい」と話す。

 お目当ての寿司店でゆっくり食事するインバウンド客も少なくないが、こうして場外を回って安く、ちょっとずつ上モノ魚介をグループでシェアしながら、味わう光景も多く見られる。店先でエビやカニ、アワビ、イカなどを香ばしく焼き上げ、提供する店も行列ができる卵焼きをしのぐほど人気。

 それぞれの店で順番待ちの列が増えれば、周辺を歩く観光客は車道などにはみ出して歩くほかはないから、場外の混雑に拍車がかかるというわけだ。さらに、場外が静まる夕方以降は、路上飲みも散見され、翌朝までにごみが目立ってしまうという。

大型連休前に対策を協議

 ゴルデンウイーク中、場外では「築地春まつり」と銘打って、5月5、6日などに「築地場外ホームランセール」を開催。店ごとにお薦め商品を提供するほか、マグロが当たる福引抽選会を実施し、来場をPRしている。

 一層の混雑が予想されるため、築地食のまちづくり協議会では、事前に混雑時の対応を築地警察や地元・中央区と協議しており、ごみ対策についても場外関係者と協議するなど、昨年までとは異なる対応に大わらわといった様子だった。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。

デイリー新潮編集部

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