「築地場外市場」でインバウンド客が激増、“路上飲み”“ごみ放置”で緊急対策の大わらわ

国内 社会

  • ブックマーク

 東京・銀座(中央区)からほど近く、およそ460軒の店がひしめき合う築地場外市場(以下、場外)。江戸の昔、埋め立て地として造成され、1923年の関東大震災で日本橋の魚市場が焼失したのを機に、魚市場が築地へ移転。その「市場内」とともに、魚河岸関係者らが集う全国でも有数の問屋街として、場外は発展を遂げてきた。施設の老朽化により、場内が豊洲(江東区)へ移転して4年半が経過したが、新型コロナが落ち着き、各地で人出が戻った今年、場外には驚くほどインバウンド客らが詰め掛け、活気付いている。【川本大吾/時事通信社水産部長】

魚業者の車が立ち往生、路上は人・人・人

「怖いくらいに多くの人が道路にはみ出していて、車が身動きとれなくなっちゃうから、通りたくないんだよね」

 場外にある波除神社から、新大橋通りに抜ける通称・波除通りを営業車で通行する魚のバイヤーは、眉間にしわを寄せながら、こう言い放った。午前中、場外の鮮魚店に魚を卸すため、週に数回、車でやってくるこのバイヤーは今春、日増しに混雑する観光客に手を焼いていたのだ。

 波除通りの両側には大人気の卵焼き店や、魚介を店先で焼き上げて店の前のスペースで食べさせる店、手作りおにぎりを求めて長蛇の列ができる店など、数多くの人気店があり、車の通行を妨げることが少なくない。
 
 波除通りに面した一角で営業する「肉の矢澤」の店主は、「この混雑を嫌がって仕入れに来る業者や、個人客50人くらいは来なくなったよ。早朝の開店時には、シャッターの外側の棚に空き缶や飲み終えたペットボトル、つまみの容器なんかも置き去りにされて困ったもんだ」と語る。

静寂に包まれた数年で廃業する店も

 コロナ禍に見舞われた昨年秋ごろまでの場外は、店の関係者の動きも少なく、終日静けさに包まれていた。飲食店などでは、時短営業や週末のみの営業に切り替えるなど、どこもため息混じりで急場をしのいだ。場外の商店で作るNPO法人「築地食のまちづくり協議会」によると、閉店に追い込まれる店も少なくなかっただけに、賑わいの復活に多くの場外関係者が胸をなでおろしていたという。

 場外の静寂が、喧騒に変わり始めたのは昨年秋。水際対策の緩和に加え、円安も手伝って次第にインバウンドを中心とした“来場者”は増え続け、年末にはかつての賑わいが復活した。通常は年が明け、成人の日あたりから、場外市場を訪れる観光客はいったん減るのだが、「今年はどういうわけか4月上旬までインバウンド客らは増える一方。人気店の行列はコロナ禍前の2倍以上にもなっている」と同協議会の関係者も驚きを隠せない様子。
 
 場外にはもともと、卵焼きやおにぎり店のほか、寿司やホルモン丼、ラーメン店など、行列が当たり前の店が数多く営業していた。世界でコロナが猛威を振るった数年間、インバウンド客らは来たくても来られなかっただけに、堰を切ったように場外へ集まるようになったのだ。

次ページ:早朝は「築地くらいしかやってない」

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。