「かわいい女性の部屋の屋根裏に侵入」で逮捕された男 作家・百田尚樹氏は「欲望に支配される奴らはアホ丸出し」

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 4月26日、若い女性が住むアパートの部屋に侵入するために、屋根裏の壁を壊した容疑で43歳の男が逮捕された、というニュースが大きく報じられた。すでにこの女性の体を触った容疑で逮捕されており、今回の犯行もまたわいせつ目的とみられている。

「わいせつ行為」そのものは珍しいことではないが、今回、大きく報じられたのは、その手法が珍しかったからだろう。

 女性の隣に住んでいたのは男の親族だった。男はこの部屋から屋根裏に入り、女性の部屋の上に行こうとしたものの、仕切りの壁に阻まれた。それでも諦めきれずに、壁を破壊して彼女の部屋の真上に到達。天井に穴をあけて隠し撮りをし、また手製のハシゴを用いて浴室の天井から部屋に侵入することもあったという。「かわいい女性」を触りたいという欲望が抑えられなかったようだ。

 人によっては江戸川乱歩作品あたりを、また人によってはアンジーの「天井裏から愛を込めて」という曲を想起するかもしれないが、こちらはフィクションではなくて現実の事件であり、歴とした犯罪である。

 被害者の女性の受けたダメージは深刻で、絶対に許されない犯罪なのは言うまでもない。

 多くの常識的な人からすれば、ここまでの手間をかけて人生を台無しにすること自体が理解不能なのだが、この種の欲望に支配された人間が意表をついた行動に出ることは珍しくはない。

 作家の百田尚樹氏は、著書『アホか。』の中で、この種の事件を起こす困った人たちを取り上げて、その心理を考察するとともに皮肉をたっぷりと交えながら批判をしている。以下、同書『アホか。』から、「天井裏男」に勝るとも劣らない、珍奇なケースをピックアップしてみよう(以下、同書第2章「欲望の迷宮」をもとに再構成しました)。

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(1)側溝の哲学者

 兵庫県神戸市で、道路の側溝に入って上を歩く女性のスカートの中を覗こうとした28歳の男性会社員が逮捕されるという事件が2015年11月にありました。

 男は真夜中の午前3時に格子状の鉄のふたをはずして、幅約55センチ、深さ約60センチの側溝の中に入り、再びふたをして、そこに仰向けで寝そべったまま、明るくなるまで時を過ごし、朝になって通勤する女性が側溝の上を歩くのを待っていたのです。

 朝8時前、ある女性が側溝のふたから髪の毛が出ているのを見て不審に思い、覗きこんだところ、格子越しに男が上を向いて寝ているのを発見しました。

 もし私が側溝の中を覗きこんで、そこにいる人と目が合ったら、飛び上がるくらい驚きそうです。夜、周囲に誰もいない状況でそんなことになったら、悲鳴を上げそうです。女性からすればトラウマになりそうです。数ある下ネタ事件でも、これほど凄いのはなかなかありません。

 ところで、これは絶対に初犯ではないと思い、ネットを探すと、2年前に、同じ神戸で同じ犯罪をしている男のニュースを見つけました。年齢は26歳となっていたので、おそらくまず同一犯と見て間違いないでしょう。

 そのニュースにはすごいことが書いてありました。なんと、男は近くの川につながる排水溝から側溝に侵入し、女性のスカートの中が見えるかもしれない鉄製のふたのところまで、幅30センチの土管の中を20メートル以上も移動したというのです。凄まじい執念としか言いようがありません。皆さん、想像してください。幅30センチしかない汚水と泥だらけの土管の中を20メートルも進めますか。しかも、その動機がスカートの中を覗きたいというだけなのですよ。

 ところで、側溝の中から鉄の格子越しに、歩く女性のスカートの中がはたして見えるものなのでしょうか。パンツが見えるには、ちょうど目の前で足を開かないとだめだと思うのですが、そんな絶妙なタイミングがそうそうあるとは思えません。しかもその時間はほとんど一瞬で、なおかつスカートの中なので相当暗いと思うのですが……。もしかしたら、男は心眼で見ていたのかもしれません。そしてその一瞬こそがまさしく至福の時だったのでしょう。

 しかし私を唸(うな)らせたのは、この時に逮捕された男が言った言葉です。

「生まれ変わったら、道になりたい」

 犯罪者の言葉で、これほど哲学的な名言がかつてあったでしょうか。

(2)自転車サドルへの愛

 世の中には「サドルマニア」というのがいるようです。

 2019年11月、大阪府警河内署が東大阪市の駅前やマンション駐輪場に止められていた自転車2台からサドル2個を盗んだ疑いで、静岡県に住む57歳のトラック運転手を逮捕したというニュースがありました。尾崎豊の歌に「盗んだバイクで走り出す」という歌詞がありますが、盗んだのがサドルだけではどこにも行けません。それなのになぜ自転車本体には目もくれずサドルだけを狙ったのでしょう。

 性癖は人それぞれですから、好みの女の子のお尻がくっついた自転車のサドルをこよなく愛す変わり者がいても、その心理はまだ少しは理解できます。しかし今回のように駅前に止めてある自転車では、脂ぎった小太りの汚いオッサンが通勤に使っていたものの可能性もあります。そんな得体のしれないものに頬擦りしたり、なめたいと思う心理はまったく理解できません。

 そして、この男の犯行が明らかになると、私は唖然としました。彼はトラック運転手という立場を利用して全国各地の行く先々で25年の歳月をかけ、なんと約5800個ものサドルを盗んでいたのです。そしてそれらをそのためだけにわざわざ借りた倉庫に、1個ずつ丁寧にポリ袋に入れ保管していたのです。これはもう単なるフェチを超えた「サドル愛」と呼ぶべきものでしょう。

 これほどまでサドルに執着するとは、もしかしたら、彼自身も尻に敷かれる人生を歩んできていたのかもしれません。同じ境遇にあるサドルこそが唯一の心を許せる友達だったとしたら、悲し過ぎる物語です。

(3)ぼくの○○は何点?

 コロナ以前には東京なら渋谷や新橋、大阪なら阿倍野や戎橋で街頭アンケートと称して、道行く若い女性を引き留める光景が頻繁に見られました。そのほとんどは、需要動向を探ることを目的に簡単な質問に答えるだけで謝礼の品をもらえるというものですが、すべてが本物の市場調査というわけではなく、中にはそれをきっかけに高額商品の購入につなげるものや、いかがわしい団体への勧誘もあるようで注意が必要です。

 神奈川県警横須賀署が52歳の男を公然わいせつの疑いで逮捕したというニュースが2021年2月にありました。この男は横須賀市の京急汐入駅近くで17歳の女子高生に「アンケートに協力してほしい」と声をかけて近くの駐車場に連れ込み、3千円を渡して下半身を露出していました。「これのどこがアンケートなんや」と思いきや、男はその際「10点満点で何点か評価して」と言ったとなると、なるほどたしかにアンケートにも思えます。

 さらに男はこの女子高生への行為の30分ほど前にも、近くの駐車場で20代女性に5千円を渡して同様の“アンケート”をしており、なかなか熱心な街頭アンケートマンだったようです。

 私には理解できないものですが、やはりじっくりと見てもらいたいという気持ちがあるのではないでしょうか。しかし、女性の前でいきなり露出すると、ほとんどの場合、女性が逃げ出して、とてもじっくりとは見てもらえないと思います。

 そこで彼が考えたのが「アンケート形式」だったのかもしれません。何しろ点数をつけるにはじっくり見なければならないのですから。そう考えると、彼はなかなかの知恵者です。それもそのはず、この男は日本を代表する電機メーカーの幹部社員だったのです。私はこの「アンケート形式」の発見に、彼の高い知能を見ます。

 ところが、彼に足りなかったのはリスク計算です。この行為が発覚すれば、失うものがあまりにも大きいという実に簡単なことに頭が回らなかったのです。優秀な大学を出て有名メーカーに入社して幹部社員にまでなったのに、こんなことがわからなかったのです。女子高生相手に“棒を振って”人生を棒に振るなんて、とんだお笑い種です。

 ちなみに女性たちがアンケートに何点をつけたのかは記事は伝えていません。

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 いずれの容疑者についても、百田氏は「アホ丸出し」とバッサリ。

 ここで取り上げた事例からもわかる通り、この種の犯罪は、刑法上の罪の重さと比べて大きく報じられることが少なくない。珍奇なケースはそれだけでニュースとして扱われる可能性が高いからだ。また、周囲の反応も、傷害などに比べると冷ややかになることが予想される。一時の欲望に身を任せてしまうと一生が台無しになってしまうだろう。

 殺人や強盗と比べると、どこかアホでマヌケな感じが付きまとうのは否めないが、被害者や周囲の人の人生をも狂わせる行為であって、いくらマヌケであっても、許されない行為なのは言うまでもない。

『アホか。』から一部を再編集。

デイリー新潮編集部

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