茨城県が中国ではなく「台湾人旅行者」に力を入れるワケ “観光後発県”が投じるあの手この手
予算5億円で促進事業
しかしコロナ禍もようやく収束に向かうなか、茨城県は茨城空港の復興に向けて動き出す。狙いを定めたのは中国ではなく、台湾だった。茨城県の国際観光課の佐藤尚之係長はこう説明してくれた。
「県が音頭をとって海外、とくに台湾からの観光客の呼び込みに動き出したのは昨年です。2022年度、台湾いばらき経済交流促進事業は5億円の予算規模です。契機は、東日本大震災の原発事故以来続いていた食品輸出停止の解除と、コロナの感染拡大を防ぐ水際対策が2023年に入って、緩和されていくめどがついたことです。停滞してしまった流通、人的流動の穴を取り戻すためのプロジェクトだったんです」
2022年末に台北で行われた「ITF国際旅遊展」にも茨城県は参加。日本全国からの自治体に混ざって、PRに力を入れた。
茨城県の農産物、食品加工品などを広めるため、台湾のPR会社に依頼して、台北駅などに茨城県の特産品を集めた冷凍自販機を設置している。冷凍焼芋、干し芋、レンコンどら焼、茨城米を使ったカレー、リゾットなどの販売をはじめた。観光名所を含め茨城の知名度をあげるために、台湾と縁の深い渡辺直美をキャンペーンアイコンとして起用し、2022年8月から「台湾日本宣伝大使」となった。冒頭で紹介した今年に入っての大規模広告もその流れだった。
3月26日からは週2便体制で、台湾のLCC、タイガーエア台湾の乗り入れがはじまった。2020年3月から運休していた路線が、週2便3年ぶりに復活したわけだ。
PRの成果か、第一便は満席となり空港は台湾人のグループ客であふれた。旅行会社が企画したツアー客は、水戸偕楽園、大洗海岸、大洗磯崎神社などを訪れて茨城県内での宿泊が組み込まれている。
「茨城空港を利用する観光客が茨城の頭を越えて東京に向かってしまったことの反省点を踏まえ、茨城滞在型の誘致に主眼をおきました。霞ヶ浦のサイクリングロード、水路の街である潮来の遊び方やグルメ案内、太平洋に上がる日の出、霞ヶ浦に落ちる夕陽を賞でるポイント、つくば学園都市の先端性をPRしました」(前出・佐藤尚之係長)
台湾では人気の自転車ツアーも視野に入れている。「日本有数の霞ヶ浦のサイクルルートへ」と、台湾で開催される自転車ショーなどにも出展を仕かけているという。
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