大川隆法氏の死亡届が提出された日には重要な意味があった…後継者問題にも異変か

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遺産と後継者争い

 大川氏には前妻・きょう子氏との間に生まれた男3人女2人、計5人の実子がいる。これに後妻・紫央氏を加えた6人が遺産相続権を持つ。しかし大川氏は財産の多くを教団に寄付しており、相続対象となる個人資産はほとんどないのではないかとも言われる。

 前述の通り、宗教法人の登記では代表役員ではなく「代務者」として石川氏が登記された。法人の代表者や宗教的な意味での後継者は、いまだはっきりしない。

 現時点で最有力候補は紫央氏だ。これまで次期総裁とされていた長女の咲也加氏が「お多福」云々によって降格されたことで、大川氏の実子は全員、後継者候補から脱落したと言われている。

 一方で、咲也加氏の夫、直樹氏の存在も気になるところだ。咲也加氏とともに今年2月に降格されたと伝えられているが、大川氏の死亡届の届出人は、直樹氏だったからだ。

 前出の信者によると、公開された「生前の最後の霊言」の中で、霊の言葉として大川氏が、直樹氏を「(後継者候補の)有力な何人かの1人」と語っているという。紫央氏を凌ぐ有力候補かどうかは別として、教団内での立ち位置は悪くないようだ。

「結婚前から教団職員だった直樹さんは、教団本部に対して従順です。咲也加さんは、直樹さんとの離婚でもしない限り、後継者争いに打って出るのは難しいのでは」(教団関係者)

政党や学校はどうなる

 教団の主要な収入源は信者からのお布施(献金)だ。2011年のきょう子氏の証言によれば、お布施収入は年間300億円。現在はこれより減っている可能性はあるが、いずれにせよ、こうした金は、書籍や映画等のメディア事業、政治活動、教育事業などに投入されてきた。

 幸福実現党の政治資金収支報告書によると、2009年の結成時から2014年までに積み上がった宗教法人幸福の科学からの借入金は、111億円に上る。翌年から返済を始め、2021年は衆院選もあったのに、約11億円の党収入の9割近い9.7億円を返済にあてた。それでも約27億円の借金が残っている。

 教育事業としては、栃木・滋賀両県で2つの幸福の科学学園(中学・高校)を擁する。うち栃木県の学校基本調査(令和3年度分)によると、高校は全学年が定員割れ。第2学年は、中退や転出があったのか、前年の第1学年から14人減の76人しかいない。

 学園卒業生は、多い年には7割程度が、無認可の「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU、千葉県)に入る。しかしHSUも、在籍者数は公表されていないものの、内部からはやはり定員割れが指摘されている。

 教団においては強大なカリスマであり最大のコンテンツでもあった大川氏を失ったことで、人集めや金集めがこれまで以上に難しくなる可能性もある。とはいえ、各事業から撤退すれば、信者たちのハシゴを外すことになる。

 特に学園やHSUは、標準的な教育や進路を捨ててまで教団や大川氏に人生を捧げる熱心な若い信者の受け皿だ。宗教「2世問題」の温床になっているとの指摘もあるが、もし教団が強引に手を引けば、2世信者たちの人生も激しく混乱するだろう。

 後継者には、教祖が作り上げた「負の遺産」も重くのしかかる。

藤倉善郎(ふじくら・よしろう)
ジャーナリスト。1974年生まれ。宗教団体以外も含めた「カルト」の問題を取材。2009年にはカルト問題専門のニュースサイト「やや日刊カルト新聞」を創刊し、カルト被害、カルト2世問題、カルトと政治の関係、ニセ科学やニセ医療、自己啓発セミナーの問題などの取材を続けている。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)、『徹底検証 日本の右傾化』(共著、筑摩選書)、『カルト・オカルト 忍びよるトンデモの正体』(共編著、あけび書房)。

デイリー新潮編集部

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