部下に性加害、自殺に追い込んだ69歳「元弁護士」 立派すぎる経歴と「恋愛関係だった」という釈明に感じる落差

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弁護士会の発表

 焼酎に対する情熱に嘘偽りはなかったようで、「中津焼酎サミット」の実行委員会で代表も務めた。

 地元の大分合同新聞は2010年11月、第7回のサミットが開催されたことを記事にし、《うまい焼酎を酌み交わしながらの異業種間交流で、中津の活性化を目指そうという取り組み》と紹介した(註2)。

 まさに中津市の名士だったわけだが、それが一気に転落したのは2020年9月。大分県弁護士会は善二郎氏の部下だった女性弁護士の自殺を受け、「法人会員の懲戒処分について」との文書を発表した。

 善二郎氏が2015年3月ころから2018年8月までの間、《勤務していた者に対し、その職務上の立場を利用し、同人の意に反して複数回セクシャルハラスメントを行った》と指摘。

 先に触れたように、善二郎氏は女性弁護士が18年に自殺すると、弁護士を引退している。

 このため弁護士会は善二郎氏に対して処分を下すことができず、清源法律事務所に業務停止6カ月の懲戒処分を下した。

 処分の理由として、清源法律事務所はセクハラの予防を怠り、善二郎氏のセクハラ行為を看過したと指摘。《弁護士法人として廉潔を欠き品位を失うべき非行》と批判した。

父子の控訴

 ところが、清源法律事務所は処分を不服として日本弁護士連合会(日弁連)に審査請求を行った。これが棄却されると、今度は東京高裁に懲戒処分の取消を求めている。

 さらに、1億2800万円の支払いを命じた大分地裁の判決も不服とし、4月26日に福岡高裁に控訴した。

 被告側の代理人弁護士は控訴について「女性の意に反する性行為があったというのは事実誤認。自殺との因果関係の認定もずさんだ」とコメントした。

「善二郎氏の父・敏孝氏は、大分地裁で全員有罪となった菅生事件の冤罪を訴えて福岡高裁に控訴しました。善二郎氏もまた、大分地裁の判決を不服として福岡高裁に控訴したのです。同じ法的手続きとはいえ、父は公安によるでっち上げ事件を糾弾し、息子は部下が自殺したセクハラ事案は恋愛関係だと訴えた。内容の落差に愕然とする法曹関係者も少なくないのではないでしょうか」(同・記者)

註1:冤罪なき社会へ決意 菅生事件の記念碑完成(大分合同新聞:2012年6月12日)

註2:杯交わし異業種交流 中津焼酎サミット 人気銘柄 60種類「地域の活性化に」(大分合同新聞:2010年11月5日)

デイリー新潮編集部

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