部下に性加害、自殺に追い込んだ69歳「元弁護士」 立派すぎる経歴と「恋愛関係だった」という釈明に感じる落差

国内 社会

  • ブックマーク

PTA連合会の会長

 清源敏孝弁護士は三井三池炭鉱(福岡県)の労働争議に尽力したほか、1966年には地元の文化総合誌「邪馬台」の創刊にも関与した。同誌は評論、小説、詩歌、研究論文など広範なジャンルの受け皿となり、大分の論壇・文壇をリードしたと高く評価されている。

「終戦直前の1945年5月、大分県の上空を飛行していた米軍のB-29爆撃機に日本軍の戦闘機が体当たりしました。戦後、両軍の兵士を慰霊する『平和祭』が開催され、敏孝氏は初代理事長を務めています。敏孝氏は1996年に85歳で死去しましたが、99年に句碑が建立されました。句碑には敏孝氏が詠んだ『恩讐を 越へて 杜鵑花(さつき)の 火と燃ゆる』が彫られました」(同・記者)

「これほど立派な父親を持った善二郎氏も弁護士としての活動を続けるうち、大分県や福岡県のメディアに取り上げられるようになりました。90年代後半には中津市のPTA連合会の会長に就任。いじめ撲滅のシンポジウムを開催したり、環境ホルモンが溶け出す可能性があるポリカーボネート製の食器が中津市の小学校給食で使われていたことから署名運動を展開したりするなど、様々な活動が新聞などで報じられました」(同・記者)

教育論を出版

 2000年には教育論をまとめた著書「お母さん達もSOS」(文芸社)を上梓。父が創刊に関わった同人誌「邪馬台」に発表したエッセイが好評だったため書籍化したという。

 朝日新聞の大分県版は2000年1月、「子との対話を本で提言 中津の弁護士・清源善二郎さん出版」の記事を掲載した。

 部下の女性弁護士に性的被害を与えて苦悩させ、自殺に追い込んだ弁護士が出版した本だと思って記事を読むと、非常に皮肉な一節がある。

《本は「茶髪」「援助交際」「自然」「体罰」「溺愛(できあい)」「崩壊」という副題の六章で構成。例えば、「援助交際」について、表向きには金欲しさと見られているが、偏差値教育への不満や家庭での対話不足などが根底にあるとして、自分が扱った事例を挙げている》

《「体罰」は、相互信頼に基づく教育を破壊し、心に傷を残すなど多くの弊害を生むとしている。「自然」の章では、テレビゲームより自然体験、動物飼育や読書へ関心を向けるよう提言する》

 善二郎氏が再び脚光を浴びたのは2009年。裁判員裁判がスタートし、大分県弁護士会の会長としてメディアの取材に応じた。

 読売新聞の西部版は2009年7月、「キーパーソン」の欄に「県弁護士会会長 清源善二郎さん55=大分」の記事を掲載した。

 裁判員制度の課題についての主張が紹介された後、善二郎氏の素顔を伝える一節がある。

《全国各地の地焼酎の収集が趣味で、焼酎に関する本を出版するほど。「全国各地の珍しい焼酎を近所や仲間に振る舞うときが、一番うれしい」》

次ページ:弁護士会の発表

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。