中日移籍でようやく1勝…なかなか笑わない「涌井秀章」は本当はいい人だった

スポーツ 野球

  • ブックマーク

スイーツにこだわりが

 13年オフにフリーエージェント権を行使して千葉ロッテに移籍。年俸が突出して高かったせいか、ここでもチームメイトとの距離を縮めたようには見えなかったが、意外な一面も披露していた。

「球場スタッフ用にと、ソフトクリーム機をプレゼントしてくれました。夏場、日中のグラウンド整備は体力勝負ですし、涌井自身も甘いものが好きだと話していました」(前出・関係者)

 おそらく、16年オフに結婚したタレントの押切もえ夫人の影響もあるのだろう。楽天に在籍していたころもスイーツに関するエピソードを残している。本拠地・楽天モバイルパーク宮城には、選手プロデュースの弁当などが販売されているブースもあるのだが、そこで涌井が考案したのは、「涌井秀章のカフェモカシェイ ク」。オシャレなスイーツは女性ファンに好評を博し、「選手プロデュース=ごっつい、満腹」のイメージも大きく変えた。

「昨年オフ、楽天のファン感謝デーが行われたとき、すでに中日へのトレード移籍は発表されていました。楽天のフロントスタッフは『参加してもしなくても』と本人に任せていましたが、涌井はエプロンをつけ、球場内販売店を手伝っていました」(地元メディア関係者)

 ファンの記念撮影のお願いにも、気さくに応じていたそうだが、涌井はそういうときでもニコッと笑うことができないのだ。これは、性格だろう。

「一度じっくり話をしてみると、良い人と分かるのだが、雰囲気は怖いし、言葉足らずのところあります。でも、若手を連れての自主トレでは旅費、食事なども全て涌井持ちで、変化球の握り方まで教えてくれるそうです」(前出・ベテラン記者)

 その面倒見の良さだが、今季、巨人・横川凱(22)のブレイクにも涌井が関係していたという。横川は育成選手から一軍の先発ローテーション投手に駆け上がった。トレーニングジムで知り合い、横川のほうから涌井の自主トレに参加したいと申し出た。涌井は二つ返事で快諾した。

「涌井の自主トレは走り込みがメインです。一日でトータル10キロ以上走ることになるハードメニューで知られています」(前出・同)

 涌井はプレート板の立ち位置、目線など“投球のコツ”も横川に教えていたそうだ。自主トレに参加した若手はほかにもいたが、中日と巨人は同一リーグのライバルであり、将来、横川と投げ合う可能性もある。それでも、「結果で勝負しよう」と言えるのは、さすがだ。プロ1年目から先発ローテーションを任され、一人で練習してきたその内容にも自信があるのだろう。

 移籍後初勝利の試合でも先に失点したが、表情一つ変えず、淡々と投げ続けていた。試合後、涌井はこう言った。

「まずはひと安心。非常に楽しく投げられた。今は楽しく投げられているので、それがいちばんだと思う」

 通算155勝はNPB現役選手で2位、19年目のベテランは「自分」を持っているから群れない。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。