テレ朝、日曜夜10時の新ドラマ「日曜の夜ぐらいは…」は脚本に注目すべき理由

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女の友情が巧みに描ける理由

 友情を描く名手でもある。男の場合は反町隆史(49)と竹野内豊(52)の「ビーチボーイズ」(フジテレビ系、1997年)が代表作だ。女性に捨てられ、居場所を失った桜井広海(反町)と、仕事の失敗によってエリートコースを外れた鈴木海都(竹野内豊)が出会い、ある夏を民宿・ダイヤモンドヘッドで過ごす。

 2人は経歴も立場も違ったが、友情で結ばれる。岡田作品の場合、友人となる条件に経歴や立場は含まれない。

 女の友情を描いたTBS「ランデヴー」(1998年)も何もかもが異なる2人が結び付いた。まず、ごく平凡な主婦・朝子(田中美佐子・63)が、自分に関心のない夫に嫌気が差して家出。辿り着いたホテルで官能小説家の真由美(桃井かおり・72)と出会い、たちまち親しくなる。

 2人が結び付いた理由は単純明快だった。ともに淋しさを抱えており、友情と愛情に飢えていた。やがて2人はまるで姉妹のような関係になる。

 岡田氏が描く女の友情は女性の間で「共感できる」と評判高い。友情に限らず、岡田氏の書く女性心理はリアルだと言われている。岡田氏本人の言葉によると、その背景には家庭環境の影響がある。

「親父は仕事でほとんどいないような家で、母親、ばあちゃん、姉、妹、そして男は僕だけという状況が長かったので、わりと女の人のほうが、話していて楽というのがあるんです。その辺から女性を書くのが好きなんじゃないかなと」(『ドラマな人々 岡田惠和とドラマチックな面々』アスペクト)

 新作「日曜の夜ぐらいは…」も女の友情がテーマである。清野菜名が演じる主人公は岸田サチ。足の不自由な母親(和久井映見)との生活を支えるため、休みなくバイトをする日々を送っている。

 岸井ゆきのが扮する野田翔子は家族から縁を切られ、今はタクシー運転手をしている。生見愛瑠が演じる樋口若葉は両親との縁が浅く、借家で暮らしながら祖母(宮本信子・78)と工場勤務を続けている。 

 3人に接点はなかったが、あるラジオ番組をきっかけに知り合い、やがて友情が培われる。経歴も立場も違う人間の間に友情が生まれるのは岡田作品の醍醐味の1つだ。

 また、この作品にはほかのドラマがまず描かない女性たちが登場する。障がいのある親と暮らす女性、タクシー運転手の女性、工場で働く女性。これも日常から目を背けない岡田氏らしい。

 キャッチコピーは「恋愛なんか奇跡じゃない。『友情』こそが奇跡だ」。

 春ドラマのプライム帯(午後7時~同11時)には恋愛ドラマが4本もある。「日曜の夜ぐらいは…」というタイトルの通り、日曜の夜くらいは恋愛から離れてもいいのかも知れない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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