テレ朝、日曜夜10時の新ドラマ「日曜の夜ぐらいは…」は脚本に注目すべき理由

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あざとく泣かせない

 岡田作品には泣けるものが多い。「人生最高の贈りもの」も「ひよっこ」もそう。けれど、あざとさは感じられない。岡田氏はこんなことを言っている。

「作り手側が『泣かせてやろう』としている様子が少しでも見えてしまうと、観客は一気に冷めますよね」(『「ひよっこ」×「君の名は。」対談』文藝春秋)

 露骨に泣かせようとするのは岡田氏の哲学に反するのである。確かに「人生最高の贈りもの」の場合は娘の容体悪化や死を描かなかったし、「ひよっこ」には目頭が熱くなる場面と同じくらいユーモアがちりばめられていた。

 あざとく泣かせない岡田哲学を象徴した作品の1つが、TBSのスペシャルドラマ「君が光をくれた」(2006年)だった。成海璃子(30)がリストカットを繰り返す問題少女に扮した。自分を傷つける理由は両親のネグレクトで、少女は誰も信じられなくなっていた。

 少女は児童自立支援施設に入る。そこで施設長の妻(和久井映見・52)が柴犬を飼わせた。犬は人間から酷い虐待を受けた後、保健所で殺処分になる寸前だった。

 少女と犬はやがて固い信頼関係で結ばれる。ともに元気になった。しかし、少女は犬を別の飼い主に託す。自分も犬も自立しなくてはならないと考えたからだ。少女にも犬にも辛いが、避けられない選択だった。

 数年後、少女が完全に立ち直り、全寮制の高校に通い始めると、街で犬と再会する。新しい飼い主と散歩をしていた。ここで犬が猛ダッシュで駈け寄ってきたら、映画「南極物語」(1983年)さながらの感動の場面になったはずだが、岡田氏はそうしなかった。なんと犬は少女に気づかなかったのである。

 岡田氏は少女が自立支援組織で過ごした時期と、犬が少女の愛に救われた日々をともに通過点と捉えた。暗いトンネルを抜けたら、それを振り返る必要はないと考えたのである。

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