「海岸に打ち上げられた動物は地震の前兆説」のうさんくささ 非科学的では?(中川淳一郎)
千葉県一宮町の海岸で4月3日~5日にかけ、30頭以上のイルカが打ち上げられたことは地震の前兆では、と週刊現代4月15・22日号が報じました。記事では、東日本大震災の7日前、茨城県の海岸に約50頭のイルカが打ち上げられていたことも挙げています。そして科学ジャーナリストによる「イルカは電磁波に敏感。海底の岩盤の動きが活発化した時に発生する電流により、方向感覚が狂ったのでは」との分析を紹介します。
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しかし、私はこの手の「海岸に普段はいない生物が打ち上がったのは大地震の予兆説」ってのはどうも信用していないんですよ。何しろ、大量のボラが浜離宮の近くの川に集結した時も、深海魚・リュウグウノツカイが海岸に打ち上げられても、ダイオウイカや鯨が打ち上げられても「大地震の前兆」説は登場する。しかし、来たためしがない。
いや、来るのを願ってるわけではないですし、地震には普段から備えるべきですが、この手の狼少年的分析、そろそろ科学的に覆されてもいいのではないでしょうか。〇〇があったから××が起こる予兆というものは、何にでも当てはめることができます。過去の大地震を分析し、発生した珍しい事象の共通点を見つければいい。それは何でもよくて「雷雨」「季節外れの気候」「花粉の飛散量激増日があった」「黄砂の量が多かった」「満月の前後」などの自然現象に加え、「飼い犬がやたらと吠えた」とかでもいいのです。
「海岸に打ち上げられた」が地震の前兆の根拠になったのは、地震の前にナマズが暴れる、という昔からの言い伝えをベースとしているのではないでしょうか。だから、水中生物の異常行動が地震と安易に結び付けられてしまう。
「国家が隠す事件・ニュースの真相を公開する」を謳う、とある個人ブログがあります。このブログでは、2016年の北海道内における鮭の不漁を地震と関連づけているのです。本当かよ。
冒頭のイルカ記事に戻りますが、過去のイルカ打ち上げと東日本大震災を結び付けているものの、現場は茨城ですよ? 震源地の宮城県沖からかなり遠いのですが……。電磁波にしても、海上保安庁の巨大な船や米軍の空母や潜水艦が通ったら強力な電磁波を発するわけで、各地で毎日のようにイルカが打ち上がっていてもおかしくない。むしろ群れで動くイルカのうち、先頭を泳ぐ個体が途中、方向感覚を失って暴走し、それにひきずられた後続イルカも続々と海岸へ打ち上げられたのではなかろうか。
南半球ではペンギンが海岸に多数生息しているのが見られますが、2022年、ニュージーランドで大量のペンギンの死骸が海岸に漂着したのは異常扱い。これは気候変動が原因とのことです。海水温が上がり、浅い海を泳ぐ魚が深場へ行き、ペンギンがエサを捕獲できず餓死したのだとか。
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