「根底にあるのはスタッフとの信頼関係」有田哲平が語る“しゃべくり”“脱力タイムズ”に活きるプロレスでの学び
プロレスに学んだ「脱力タイムズ」「しゃべくり007」
――有田さんは「全力!脱力タイムズ」では総合演出も務めています。一方で「オマエ有田だろ!!」「引退TV」「有田脳」などトークで楽しませるものが多い。プレイヤーとして、その面を見せたいという思いがあったんですか。
芸能生活も30年やってきましたが、始めた頃はネタしかできなくて。やがて、いわゆるちょい役でテレビに出させてもらえるようになって、地方のイベントの営業で30分のステージをやったり。そういう経験を経て、今はテレビのスタジオでおしゃべりしたり、ゲームしたり、クイズをやったりといろんな仕事をさせてもらっています。
けれど、何がしたくて、この世界に入ったんだろうとなったとき、もちろん笑いを取りたいのは前提として、究極はやっぱりおしゃべりだなってことがだんだんとわかってきた。それは僕がお客さんを集めて漫談をする、1人でベラベラしゃべることだけではなくて、人としゃべったり、人の話を聞いてみたり。
その想いはずっと前からあったと思うんです。だけど、どうしてもテレビというメディアは、じっくりおしゃべりを聞かせる場では今のところないというのがあって。僕がやっている「しゃべくり007」は、あれはトーク番組ですかね? しゃべくりと言っているけど、しゃべくったことがない(笑)。ふざけてみんなでシミュレーションをやったり、ゲストのふざけたところを見たり。いわゆるテレビっぽい番組だなとも思います。
自分がプロレスのことをゆっくり教えるとか、「アメト――ク!」で何年に1回かやらせていただくこともありますけど、あれを毎週とはならないです、やっぱり。
昔で言えば、リビングでご飯を食べながら、家族で話しながらたまにちらっと見るテレビと、じっくり話を聞こうと思って見るYouTubeではやっぱり文化が相当違う。YouTubeはそういうことに特化したメディアかなという感じがします。
――「有田脳」や「オマエ有田だろ!!」ではその場で渡されたお題に対して即興的に答える形にしています。なにか理由があるんですか。
「しゃべくり007」においても「有田脳」においても、この番組においてもですが、根底にあるのはスタッフとの信頼関係なんです。
「全力!脱力タイムズ」でいえば、ツッコミのゲストには徹底的に台本は教えません。何も知らずに、現場でいろんなことが起こって、それにあたふたしてもらうんですが、どこかで本気で嫌がられても困るなというのはあるんです。相手には一番輝いてほしいし、なおかつこの場でしか見られない顔が見られたらいいなと考えている。ゲストは「こんなんでよかったんですか」って不安気だけど「じゃあオンエアを見てくれ」って言って、見たらちゃんと面白くなっているようにしたい。
「しゃべくり007」もそうで、事前にゲストが誰なのかは教えてもらえませんし、企画もその場で伝えられます。けれど、出演するわれわれが本当に「どうしていいかわからないってマジで」となったら番組は失敗する。
「オマエ有田だろ!!」もそうで、その場でお題を出すにしても僕が全く知らない団体のお題が出ることはありません。ある程度なんとかなる、これはいけるだろうと言うものをスタッフが出してくれる。この番組でやったクイズ企画の回も、全問不正解だと面白くないし、逆に全問正解でも面白くない。だから、ちょうどいい塩梅、そこがスタッフとの信頼関係だなという感じがするんですよ。
で、こういうことをどこで学んだかというとプロレスのような気がしていて。プロレスは相手に怪我させたり、再起不能にさせたらダメ。かといって「そんな技、全然効かない」となっても困る。ちょうどいいところで、攻めていかなきゃいけない。それを定義付けしようとすると、すごく難しいんですけど。
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