「大谷翔平」投手で“オレ様”全開のナゼ ピッチクロックがあぶり出す「もう一つの顔」とは
投球時間の制限は不利と言われたが
米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平(28)はメジャー6年目の今季、投手としての活躍が目覚ましい。5試合に登板し、3勝0敗、防御率0.64。開幕前に投打に獅子奮迅の働きを見せたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の疲労や、投球に時間制限を設けた新ルール「ピッチクロック」の影響をものともせず、サイ・ヤング賞も夢ではない快進撃が続く。飛躍的に進化した「投手大谷」を探ると、意外な一面が見えてきた。
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マウンド上の大谷が、「ピッチコム」を内側に装着した袖に手を当て、球種を捕手に伝達する光景は今や見慣れたものになった。昨季まで配球を組み立てるのは主に捕手だった。だが、大谷の考えとたびたび食い違うことがあり、サイン交換に時間を要した。
例えば、走者有りで投球までにかかった平均時間20秒0は、399投手のうち380位で、大谷はメジャー全体でもかなり遅い部類だった。それゆえ、走者無しで15秒以内、有りで20秒以内に投げることが義務づけられたピッチクロックは、大谷に不利とされてきたのだが……。
今季は大谷主導で配球を決めるように変わった。元NPB球団捕手はこう解説する。
「メジャーのバッターと対戦を重ねてきたことで、大谷は自分で特徴を把握できている。ほとんど迷うことなく(ピッチコムの)ボタンを押しているように見える。投げる前から打者を仕留めるイメージを描き、配球を逆算しているのだろう。違反も一度だけで、ピッチクロックで不利になったのは大谷ではなく、配球を考えたり、体勢を整えたりする時間が減った打者側だ」
だが、大谷は自身で配球に頭を悩ますことが負担にならないのか。
「大谷は投打、走塁全てに万能で、全て一人でやってしまいたいタイプ。打者の雰囲気などから狙い球を察知する力にもたけている。球種を選択する労力より、試合中に捕手と配球で意見を擦り合わせるストレスがなくなったメリットの方が大きい。(配球を決めることで)打たれれば全て自分の責任になったことは逆にいい刺激のようで、打たれても気持ちを切り替えやすい」(元NPB球団監督)
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