【リブゴルフ】オーストラリア戦は大成功 日本でも超一流が集まる“ド派手な大会”開催の可能性

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商機を逃さなかった

 ビジネス的に鼻が利くノーマンCEOは、そんな状況にすかさず目を付け、今年の年間14試合のスケジュールの中に母国オーストラリアで開催する大会を初めて組み入れた。

 娯楽のない場所に娯楽施設を用意すれば自ずと人々が集まってくるように、オーストラリアの人々が見たがっているゴルフトーナメントをオーストラリアにもたらせば必ずや盛り上がる。ノーマンはそう考えたのだ。出場する選手は、フィル・ミケルソンやブルックス・ケプカ、ブライソン・デシャンボー、ダスティン・ジョンソンといったビッグスターばかりと来れば、オーストラリアの人々がその機会を逃すはずはない。

 そんな予想通り、開幕前から入場チケットは完売。ゲートの前には長蛇の列ができ、オープンするやいなやグッズなどのお土産を売るマーチャンダイズ・テントに大勢の人々がなだれ込んだそうだ。

 終始、鳴りやまない賑やかなBGMは欧米ツアーの大会にはなく、リブゴルフだけに見られる演出だ。その音楽が鳴り響く中いざ試合が始まると、人々はロープ際にぎっしり並び、3重4重、いやそれ以上の人垣をなして選手たちの一挙手一投足に歓声と拍手を送り続けた。

 やはりオーストラリア出身選手で元PGAツアー選手のマーク・レイシュマンは「これほどエネルギッシュなギャラリーの前で僕はゴルフをしたことがない」と驚き交じりに喜んでいる様子だった。

 昨年の全英オープンを制したーストラリアの英雄キャメロン・スミスも「この国にはゴルフに対する強い渇望がある。今年は初めての開催だったけど、今年1度きりではなく来年も再来年も、是非ともオーストラリアで試合を開催してほしい。そうすればこの熱狂ぶりはもっと大きくなる」と話す。

韓国や日本で開催する可能性も

 リブゴルフは今週(4月28~30日)、シンガポール戦の開催を予定しており、「オーストラリア戦と同様の熱狂ぶりが見られるのではないか」と米メディアは予想している。

 米スポーツイラストレイテッド誌は「リブゴルフは今後の開催地の候補として韓国や日本に目を向けるはずだ。もともとゴルフ人気が高いアジアの国々でリブゴルフが試合を開催すれば、間違いなくとんでもない熱狂が起こる」と予言している。

 韓国ではPGAツアーのCJカップが開催されてきた。新型コロナ対策として同大会が米国開催になってから、韓国のゴルフファンはスター選手が勢揃いする大会を国内で楽しむ機会が失われている。

 日本ではPGAツアーのZOZOチャンピオンシップが2019年から開催され、初回はタイガー・ウッズ、2021年は松山英樹の優勝で大いに盛り上がった。だが、PGAツアーのスケジュールの影響で出場選手の顔ぶれが淋しくなった一昨年と昨年は、試合会場の雰囲気がトーンダウンしていた。

 そんな中、来年あたりには、韓国や日本、あるいは、ゴルフ人気は高いが欧米ツアーの試合開催が皆無に近い国で、リブゴルフの大会が盛大に開催されるかもしれない。さらに、ミケルソンやジョンソンといったスター選手が勢揃いすると聞いたら、おそらくゴルフ好きは「見たい!」「行こう!」ということになるのではないだろうか。

 リブゴルフに否定的・批判的な人々は、先週のオーストラリア戦の熱狂ぶりを知ってからも、サウジアラビア政府の人権侵害問題やテロ事件との関わりを指摘し続けている。「血塗られたオイルマネーの支援を受けるリブゴルフ」と批判し、眉をひそめている人々もいる。PGAツアーやDPワールドツアーに背を向けてリブゴルフへ移籍した選手たちの行動を「裏切り行為」と呼び、軽蔑の眼差しを向け続けている人々ももちろんいる。

 だが、一流ゴルファーの優れたプレーを見たい、ビッグなゴルフトーナメントを観戦したい、楽しみたいと願っている人々の目の前に、「求めていたもの」がもたらされたとき、おそらくリブゴルフのバックグラウンドにある諸事情は「関係ないもの」となる。

 そして、これまで体験したことのない「リブゴルフの熱狂」という新たな世界に身を置き、自身も熱狂する。

 それが是か非かはさておき、人々の波は少なくとも瞬間的には、賑やかなで熱いほうへと流れていくのではないか。リブゴルフがオーストラリア戦で得た成功は、あたかも彼らの今後の大成功を予言しているかのように思えてならない。

舩越園子(ふなこし・そのこ)
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。

デイリー新潮編集部

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