神戸「ラーメン組長」射殺事件に秘められた切ない裏側 「カレー屋」「タクシー運転手」「デイトレーダー」…当世ヤクザの「副業」事情
「鉄板焼き屋」「白タク」「タクシー運転手」…
2019年、兵庫県尼崎市で神戸山口組の幹部が自動小銃で15発近くの銃弾を浴びて殺害される事件が発生。凄惨を極めた事件の現場は、死亡した幹部が切り盛りする飲食店の前だった。
「もともとは幹部の親族がやっていた鉄板焼き屋だったが、当時は幹部が店に立って接客などもしていた。入店した銃撃犯から“車を駐車するところはないか?”と訊かれた幹部が案内のため店を出たところを狙われ“蜂の巣”にされた。店の名義は別人だが、ヤクザが副業でスナックや居酒屋などを経営しているケースはいまも少なくない」(捜査関係者)
他にもあくまで構成員のまま、白タクやダンプの運転手、なかにはタクシー運転手をコッソリやっている者もいるという。
「我々の世界でいう“シノギ”とは本来、クスリや詐欺、風俗などが代表例だが、どれもイザ始めるとなれば、それなりの元手や人脈が必要になってくる。そういったシノギにうまく噛めればいいが、そうでない者は自分で何とかするしかない。若い連中で目端の利く奴らは流行りの暗号資産(仮想通貨)なんかで儲けているが、そういった知識もない中高年以上の組員のなかに苦肉の策として、飲食や運転手などの副業に手を出す者がいるのは事実。背景にあるのが会費の存在だ」(前出・暴力団関係者)
「会費」という上納システム
毎月、上部団体などに納める会費は「役職」によって額も変わってくるが、長引く不景気やコロナ禍などもあり、支払いに苦労している組員や組長は多いという。
「たとえば2次団体の組長クラスなら月50万~100万円程度というのが、上に納める会費の相場だ。一方で3次団体のヒラの組員なら月2~3万円の会費を組に納めるだけでいいと聞く。“役”の付いた幹部ほど毎月、相応の額を納めなければならないため、シノギで足りなければ“副業”も考えざるを得ないだろう。ヤクザ社会がどこまで行っても“カネがものを言う世界”であるのは変わらず、実際、上納金の多寡によって出世も決まる。だから、みんな必死だ」(同)
「経済ヤクザ」として知られた元山口組系組長で、現在は投資家や評論家として活動する「猫組長」こと菅原潮氏がこう話す。
「若い構成員のなかには株などのデイトレードを副業としている者もいます。最近は毎月の会費を納めさえすれば、拘束もそれほどキツくなく、構成員でも比較的自由に動けるとも聞く。一般人から見れば、副業で儲かるなら“いっそのこと、ヤクザを辞めてソッチに専念すればいいじゃないか”と思うかもしれませんが、組を抜けるのにも一般企業と違ってそれなりの“手順”を踏まなければならない。また地方に行けば“ヤクザを辞めた途端、バカにされる”といった事情などもある。ヤクザという裏社会に身を置きながら、世間でいう正業という名の“副業”に手を染める矛盾が解消される兆しはいまも見えず、“二足の草鞋”を履くヤクザは今後もなくならないでしょう」