統一地方選で独り勝ち「維新」を脅かす大阪「万博・カジノ」用地の「カネ」と「汚染」

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ブラックボックスの中の800億円

 4月23日投開票の衆院和歌山1区補選では、日本維新の会の新人・林佑美氏が自民党二階派所属の門博文氏を下した。衆参五つの補欠選挙で、野党として唯一存在感を発揮したのが維新であるといえる。大阪府知事・市長選も制し、日本初のIR開業へ弾みをつけた格好だが、現場である大阪湾の埋め立て地ではいま「カネ」と「汚染」をめぐる問題が取り沙汰されているのだ。

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 それは、きたる2025年の大阪万博開催後、29年秋にもIR(統合型リゾート)が開業する見通しの、大阪湾に浮かぶ大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)にまつわる問題である。

 島の土地は、大阪市がIR事業者に貸す形をとるが、そもそも賃料が年間およそ25億円と「破格の安さ」(市政関係者)。これに加え、大阪湾の浚渫(しゅんせつ)土砂や建築材のガラ等が埋められる他、産廃が捨てられている一画もある夢洲には、土壌対策費や液状化対策費として上限788億円が、MGMやオリックスなどが出資するIR事業者に支払われる予定になっている。だが、

「費用をもらい受けた事業者が自由に手立てを講じる仕組みのため、使途に目が届かないおそれがある。港湾局は788億円について“税金じゃない。公金だ”と言い張っていますけれど、これぞ悪い冗談です」(同)

 対策費は一般会計予算の支出ではなく「港営事業会計」で処理されるから新たな課税措置はない、と大阪市は主張するものの、

「港営事業会計で生じた儲けは広い意味で大阪市民のカネ。それが土壌対策費の名目で事業者に流れ、使い道がブラックボックスになっているとしたらどうでしょう」(同)

 しかも土壌汚染や液状化とは別に「地盤沈下」も取り沙汰されており、この対策は約800億円に含まれていない。市の負担はさらに膨らむおそれがあるのだ。

ダイオキシンにヒ素…汚染の度合いは未知数

 最大の懸念は、土壌汚染の度合いが不明確な点だろう。全4区に分かれる夢洲のうち、IR予定地となっているのは3区。そして1区が産業廃棄物の処理場になっているのだが、

「1区は産廃の処分場であるため、環境基準が一般の土地に比べて10倍もゆるい。そうしたリアと万博予定地の2区、カジノ予定地の3区は工事用の矢板一枚で隔てられているだけ。当然、夢洲の建設現場の土壌汚染について、きちんとした調査が求められます」

 と指摘するのは、「カジノ問題を考える大阪ネットワーク」代表の桜田照雄・阪南大学教授である。夢洲の汚染が俎上に載せられたのは今回が初めてではなく、「過去には、国の環境基準を超えるダイオキシン汚染土が夢洲の埋め立てに使われていたと新聞で報じられた」(先の市政関係者)といったことも。

「そもそも市は土壌汚染対策をするといいながら、しっかりとした調査すらしていません。土壌汚染が一部発覚したのも“地下鉄のトンネル工事をした際、少し調べてみたらヒ素などの有害物質が出てきた”といった経緯だったのですから」(桜田教授)

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