80年にわたる「怨念」の因果か… 青森放火殺人、一族の“忌まわしい”歴史に迫る

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「いつも酒臭かった」

 全焼した家の付近には好彦氏の車が停まっており、後部座席には灯油が入っていたとみられる赤いポリタンクがあった。青森県警は火災の翌日、近くにある好彦氏の家を、容疑者不詳のまま現住建造物等放火容疑で家宅捜索した。

 集落の中で「ヒコ」「ヒコさん」などと呼ばれていた好彦氏は身長160センチ台ほどの小柄で小太り。髪はほとんど抜け落ちて禿頭(とくとう)に近く、足が悪いため、非常にゆっくり歩くか、手押し車を使うことも。その彼の自宅は、十文字家の目の前の緩やかな坂道を170メートルほど登った辺りにある。小ぢんまりとした平屋だが、92歳の老人が一人で住むには広すぎるかもしれない。生垣の枝は四方八方伸び放題になっており、敷地内にはコンクリートブロックや廃材、缶コーヒーの空き缶、鍋のふた、業務用焼酎の4リットルボトルが転がっていて、荒れ果てた暮らしを送っていたであろうことが伝わってくる。

 好彦氏の知人によると、

「好彦はことあるごとに“酒もってこい”と言う。『大五郎』という焼酎のでかいボトルを常備していて、いつも朝から飲んでいた。会うといつも酒臭かった」

土地を取られた恨み

 また、近所の老婆は、

「好彦宅の裏にビニールハウスや小屋などがあるが、その半分くらいは十文字家も使っており、使うタイミングがかぶると、よく好彦が相手を怒鳴りつけていた」

 と話すし、別の近隣住民もこう証言する。

「自分の土地を取られたと恨んでいて、十文字家を焼き殺してやると言っていた」

 こうした事情は警察も把握しており、事件を報じる新聞記事でも「土地をめぐるトラブル」としてすでに触れられている。しかし、事件の背景にあるのはそれだけではない。好彦氏は十文字家に対して、何十年にもわたって怨念を抱いてきた可能性があるのだ。

「ずっと家系図をたどると、十和田(とわだ)から十文字家に嫁いできた女性(A)がいて、Aと十文字家の男性の間に娘(a)が生まれたんだ。で、そのaの婿養子になったのが杉山三五郎という人だった」(十文字家のことを知る近隣の古老)

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