86歳にして現役バリバリで新曲発表 「北島三郎」が語った「俺の戦の場」
NHK紅白歌合戦を勇退して10年
演歌界のレジェンド、北島三郎がNHK紅白歌合戦を勇退して9年。今春には27年間にわたってホスト役を務めたBS放送の歌番組が終了した。さらに、自らの音楽事務所に所属した北山たけし(49)や大江裕(33)ら4人の北島ファミリー全員を独立させるなど、北島を取り巻く環境は大きく変化している。6月5日に新曲がリリースされるのを前に、現在の心境を聞いた。
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6月5日に発売される新曲のタイトルは「つむじ風」(クラウンレコード)。作曲者の「原譲二」とはご存知、北島のペンネームである。人気曲「まつり」他、これまで数多くの楽曲を原譲二名義で自身のため、あるいはファミリーのために生み出してきた。
その創作意欲は旺盛で、21世紀に入ってからの新曲のほとんどは自作のナンバーばかりである。サブちゃんは、現役バリバリの演歌界のシンガーソングライターという顔を持つのだ。
「今回の曲は、人生にはさまざまな道があるけど平らな道ばかりではない、だから頑張って生きろという、次代を担う若人たちへのエールです。同時に、鏡の中の自分に向かって言っていることでもあるんですよ」
レコーディングの合間に、両腕を広げながら、北島はそう語り始めた。
巣立っていった弟子たちへの想い
今年10月に御年87歳を迎える大御所として今、新曲にかける想いとは。
「この年ですから、あとはそんなに長い時間もない。ならば、歌手の道を選んだ俺は最期まで歩く、そんな自分への応援も込めて作りました。演歌というと、恋に破れて北へ北へと上っていく湿っぽい歌が多い。そういうのではなく、アレンジも今の時代に合うようにエレキギターを加えました。この年にしてノッた感じの明るい曲調になっています」
さらには、後進たちへの思いをこう語った。
「いつまでも俺が前にいると壁になってしまいます。それは嫌だ。今度は背もたれになって、押してあげたい。彼らは縁があって俺のところへ来ました。これからは自分で道を切り開いていってほしい。何かあれば、後ろに俺がいるからな、という気持ちでいます」
今回の新曲は、巣立っていった弟子たちへの応援歌の意味もあるのだろう。
俺の戦の場所はここ
「背もたれ」とは言いつつも、自身もまだまだ身を退くつもりはない。今後については――。
「想像や工夫をしながら曲を考えていると、退屈しないし、頭を使うのでボケ予防にもいい。コロナの状況が良くなってきたので、表の空気を吸い、いろいろな景色を見ながら、まだまだ曲作りをしていこうと思います。そして新曲を出すからには、コンサートもやりたい。お客さんが喜んでくれる姿を見ると、ああ、俺の戦(いくさ)の場所はここ、ステージなんだなあって思うんですよ」
歌手人生61年目を迎える今も、過去を振り返るわけではなく、未来を見ているのだ。