【叡王戦第2局】菅井竜也八段が「最高の振り飛車」で勝利 完敗の藤井聡太六冠に2つの課題

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時間配分に課題

 藤井に大きなミスがあったわけでもない「がっぷり四つ」の本局だが、ABEMAのAI(人工知能)評価値では菅井は一度も劣勢にならなかった。この勝利は菅井にとってかなり大きい。

 今回、2人に大きな差があったのは持ち時間(チェスクロック方式のため秒単位で消費される)の使い方だった。藤井が4時間を使い果たして1分将棋に入った段階で、菅井は1時間以上も残していたのだ。

 加藤一二三九段(83)も本局についてこう感想を述べている。

《藤井叡王は時間の使いすぎです。リードを許した上に、持ち時間でも70手目で「1分将棋」(この時点で菅井八段は持ち時間4時間のうち、残り65分)ですから、史上最年少6冠といえども苦しいでしょう。(中略)第1局同様、「タイムマネジメント」は今後の課題です》(日刊スポーツ4月24日付「ひふみんEYE」より)

 そう指摘する加藤九段だが、現役時代は序盤で驚くような大長考をし、1分将棋に追い込まれることも多かった。それでも勝ってしまうのはさすがで、迫力満点だった。

 藤井は最近、勝負所などで大長考する傾向が見られるが、タイトル戦の極めて短い持ち時間で1時間の差はあまりにも大きい。三浦九段も盛んに「藤井さんとて秒読み将棋の中ですべて最善手で応じてゆくのは簡単ではない」と懸念していた通り、1分将棋に入ってからは菅井に差をつけられていく一方だった。

“最高の”振り飛車

 また、最後まで響いたと思われるのが自玉の囲いだ。同じ穴熊でも菅井は銀のひもがつく「3九」に金を引き付けて締めていたが、藤井の金は最後まで「4一」にあってどの駒も効いていない放れ駒(浮き駒)。最後まで銀のひもが付いている「3一」に動かさなかった。さらに「4三」にいた金も放れ駒だった。このため、飛車や角を打ち込まれて「両取り」をかけられることなどにびくびくしながら指さなければならず、藤井らしい思い切った攻めもできなかったようだ。

 菅井は終局後、勝利者だけのインタビューで記者に「世界最高の振り飛車をお見せしたいと言っていましたが?」と向けられると、慌てた様子で「『世界最高の』とは言っていませんよ。『最高の』とは言いましたけど。どんどん話が大きくなっちゃって」と笑っていた。さらに「一応、想定していた戦型にはなったのですが、(中略)少し古い戦型だったんですが、今日はそういう将棋をやってみようかと思っていました」と振り返った通り、今回はかつてよく見たような「昔流の将棋」だった。

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