吉岡秀隆は27代目、高倉健や渥美清、ジャニーズも…「金田一耕助」を演じた俳優たちの評価は
初代の片岡千恵蔵が作った「スーツの金田一」
こうして誕生した初代の千恵蔵・金田一は、ユーモラスな一面のある親しみやすいキャラクターとして描かれている。
最も注目すべき点は、今やお馴染みとなった“和装スタイル”ではなかったことだ。千恵蔵・金田一の定番スタイルはソフト帽にスーツ、ネクタイ、トレンチコート。髪もボサボサ髪ではなかった。さらに、「巧みな変装術を得意とする拳銃の名手」という設定と、助手の白木静子を従えているのも大きな特徴だった。
原作とかなり異なる千恵蔵・金田一だが、制作サイドの思惑としては、戦前の因習にとらわれた封建的な動機による殺人を戦後の民主的な精神によって断罪する「民主主義の使者」として描く狙いがあったという。民主主義の象徴として、スーツ姿になるのは必然だったワケだ。
千恵蔵・金田一が計7本(49年公開の「獄門島」前後編を含む)の大ヒットシリーズとなったため、他社も続々と金田一モノの映画を制作した。2代目の岡譲司、3代目の河津清三郎、4代目の池辺亮まで、どの作品も千恵蔵・金田一を踏襲したスーツスタイルだ。
2代目の岡譲司は52年2月公開の映画「毒蛇島綺談 女王蜂」(原作の「女王蜂」を改題)のほか、57年2~4月に放送されたドラマ「月曜日の秘密」(日本テレビ系)にも出演。初のドラマ版金田一でもある。
5代目は「最も“金田一らしくない”金田一」となる。61年11月に公開された「悪魔の手毬唄」で金田一を演じたのは、なんと大俳優・高倉健。警視庁嘱託という設定と、短髪にジャケット、サングラスというラフな格好で年代物のオープンカーを乗り回す高倉・金田一に、原作の面影はないに等しかった。金田一作品というより、健さんのカッコ良さを堪能する探偵モノだったのだ。
この作品を最後に、映画の金田一モノはしばらく途絶え、6代目と7代目はドラマとなる。14年の月日を経て復活した映画版は、75年9月に公開された「本陣殺人事件」だ。
8代目の金田一を演じたのは、今や大御所の中尾彬。当初の予定では原作の通り昭和12年の話だったが、予算等の都合で現代にせざるを得なくなった。そのため中尾・金田一はヒッピー風のジーパンスタイルで登場した。
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