「どうする家康」で感じる大河ドラマの難しさ 豪華キャスト、売れっ子脚本家起用で見えるNHKの思惑とは
4月16日のNHK大河ドラマ「どうする家康」は、前週が統一地方選挙の開票特番だったため2週間ぶりの放送だった。この日の第14話「金ヶ崎でどうする!」は、いわゆる“金ヶ崎の退き口”を描いた織田信長(岡田准一)の退却劇。徳川家康(松本潤)はもちろん後の豊臣秀吉(ムロツヨシ)も登場する戦国三英傑の揃い踏みで、見所も多かった。もっとも、視聴率はいまひとつで……。
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16日の視聴率は、世帯11・4%、個人6・8%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)。世帯視聴率20%超が当たり前だった大河が、いまや二桁がやっとだ。民放プロデューサーは言う。
「これまでの大河は、いわば中高年向けの時代劇でした。お金をかけた重厚な作りがウリで、1963年の第1作『花の生涯』は尾上松緑が幕末の大老・井伊直弼を演じて、平均視聴率20・2%。第2作『赤穂浪士』は長谷川一夫が主演で、平均31・9%、最高53・0%を記録。その後もほとんどが歴史上の人物を描いていて、87年の『独眼竜政宗』(主演・渡辺謙)では平均39・7%という大記録を打ち立てました。平均20%を超えた最後は、09年に妻夫木聡が上杉家の家老・直江兼続を演じた『天地人』の21・2%でした」
15年近く20%超はなく、19年に明治から昭和を描いた「いだてん~東京オリムピック噺~」(主演・中村勘九郎、阿部サダヲ)は遂に平均8・2%を記録した。高視聴率が見込まれる時代劇でも10%を割り込むかもしれない状況だ。
「大河のみならず『紅白歌合戦』など看板番組がことごとく数字を落としていることに、NHKは危機感を抱いています。高齢世代がメイン視聴者層のNHKとしては、なかなか受信料を払ってもらえない若い世代に番組を見てもらい理解を得ることが最重要課題となったのです」
NHKの番組は大きく変わった。
若者迎合
「『紅白』は大御所の演歌歌手に代わって若手アーティストを出場させ、『ガッテン!』などの長寿番組も相次いで打ち切りました。また、午後11時台に“若年層向けゾーン”を設け、ドラマを放送しています。もちろん大河も若年層をターゲットに変えてきました。『どうする家康』の主演は、嵐の活動休止後も人気が衰えない松本潤。女優陣も有村架純や北川景子など民放連ドラの主演級を揃え、脚本にはフジテレビの『リーガル・ハイ』や『コンフィデンスマンJP』で知られる古沢良太を起用しました。タイトルバックも今風にしてCGも多用。まさに不退転の布陣で挑んだのです」
大河ドラマとしての出来が良くないか。
「作品のクオリティが低いわけではないと思います。脚本もよくできています」
今回の“金ヶ崎の退き口”は、1570年(元亀元年)、織田・徳川の連合軍が越前(福井県)の朝倉家を討ちに行ったものの、信長の妹・お市(北川景子)の夫である浅井長政(大貫勇輔)の裏切りに遭い、挟み撃ちを避けて撤退せざるを得なくなったとされている。
時代劇としては、お市が袋の両端を縛った小豆を兄の信長に贈ったことで、挟み撃ちを知らせるというのが通例だ。ところが、脚本の古沢は大きくアレンジして見せた。
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