羽生九段、なぜ将棋連盟会長を狙う? 運営の負担が増えれば「タイトル100期」は遠のく可能性も
運営に関与せず
20代にしてタイトル全冠制覇を果たしていた第一人者の挫折。その舞台裏に迫った故・河口俊彦八段は、著書『盤上の人生 盤外の勝負』にこう記している。
〈羽生には大ショックだったろう。これ以後、運営面に関わろうとはせず、若手棋士たちとも付き合わなくなった〉
にもかかわらず、今回出馬に至ったのは、
「連盟は来年が創立100周年で、東京と大阪に新たな将棋会館を建てます。その大プロジェクトが動き出した2018年に羽生九段は準備委員会の委員長に就任しました。20代の頃に推進した新会館建設が実現をみる時期に陣頭指揮を執りたい。そんな思いが決断を促したのではないでしょうか」(前出記者)
悲願達成のため“宗旨替え”に至ったという羽生九段。目下、十分な建設費用が調達できておらず、連盟元理事の田丸昇九段は、
「40年以上前の会館建設の際、大山康晴先生は会長として資金集めに奔走しました。羽生九段は豊富な知見を持っているからこそ、経営面における『新手』を期待したいところです」
が、「公務」の負担が増えれば盤上への影響は否めない。現に、4日に退任を表明した現会長の佐藤九段は、こう吐露していた。
〈会長を務めることで研究の時間が減りました〉
現在は無冠の羽生九段は、3月に閉幕した王将戦で、藤井王将に2勝4敗で敗北。
「本人はタイトル100期の大記録を目指しているはず。運営側に回るというのは、藤井六冠に負けた“ショック”も一因なのではないでしょうか」(前出記者)
“顔役”就任と引き換えに勝負の一線から退くのではないかと心配する声も多い。新たな一手が望まれるところだが――。
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