かつては猿に狙われたことも……創業150年「明治座」の食事はなぜ美味いのか

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 東京・中央区日本橋浜町にある劇場「明治座」が、創業150年を迎えた。4~5月は、2か月連続の歌舞伎公演とあって賑わっている。

伝統と新規が同居する老舗劇場

「コロナの影響もあって、明治座での歌舞伎公演は6年ぶりになります」(明治座宣伝担当者)

 明治座は、明治6(1873)年に、現在の日本橋久松町で開場した喜昇座(きしょうざ)がはじまりだ。いわゆる“芝居小屋”を除くと、現存する日本最古の劇場は慶長年間(1600年前後)創建の京都四條・南座である。

「さすがに400年以上の歴史をもつ南座さんにはかないませんが、明治座は、おそらくそれに次ぐ古さだと思います。歌舞伎座さんが1889(明治22)年開場ですので、明治座は東京でいちばん古い劇場ということになると思います」(同)

 その後、火災や自然災害などもあり、経営元や名称が何度か変わる。そして明治26(1893)年、名優・初代市川左團次が座元となり「明治座」として再スタートする。左團次は、今では当たり前となった「切符売場」や「座席番号券」などを導入し、劇場の近代化を進めた。

 これ以外にも、他の劇場にはない仕掛けがある。宣伝担当者が意外なことを教えてくれた。

「実は、オーケストラ・ピットがあるんです。現在の明治座は、平成5(1993)年3月に改築開場したのですが、その際、あらゆる公演に対応できるよう、舞台手前に、オーケストラが生演奏するためのピットを設置したのです。しかし、なかなか使用する機会がなく、ようやく本年1月、明治座創業150周年記念ミュージカル『チェーザレ 破壊の創造者』でご披露することができました」

 花道、廻り舞台、セリ、宙乗り設備……ここまではわかるが、そのうえオーケストラ・ピットまでがある劇場は、あまり聞いたことがない。
 明治座は、伝統と新規が同居する劇場なのである。

 長年、歌舞伎を観つづけている作家の竹田真砂子さん(85)は、「明治座には思い出がたくさんございます」と、懐かしむ。

「忘れられないのは、戦災で焼失した明治座が再建されて3年後の昭和28(1953)年7月、中村歌右衛門丈による『隅田川』東京初演です。舟長役は17代目中村勘三郎丈でした。すばらしい舞台で、2回か3回通いました。当時あたくしは15歳、中学3年生でした」

 明治座は尾上菊五郎劇団の出演が多く、竹田さんもよく通ったという。あるとき、その菊五郎劇団が、中村吉右衛門一座と対抗野球試合をすることになった。

「試合会場は、いまも明治座の横にある浜町公園。東京を代表する二大劇団が野球でぶつかり合うというので、早朝から見に行きました。しかも役者さんたちは、試合を終えたら、そのまま明治座へ入って昼夜公演をこなすのです。あたくしもそのまま昼夜公演を見物いたしましたが、役者さんたちの体力に、こちらが疲れてしまうほどでした」

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