福井県の“落とし穴”事故で思い出した、工事現場での事故で4万2千円のメガネを手に入れた話(中川淳一郎)

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 4月2日、FRIDAYデジタルに「『ひどい話ですよ』福井県が道路の側溝のフタを外す“落とし穴”を作った驚きの理由」という記事が登場しました。

 内容は、片側一車線の県道を運転していたAさんが、後ろの車を先に通そうと空き地に入ろうとした。しかし突然穴に落ち、車の下部分から鈍い音がした。なんと側溝のフタが外れていたのだ。修理代は60万円。県の土木部に問い合わせるもその後たらい回しを経て1カ月半後に担当者と現場へ。側溝のフタを外した理由は、地元民からの要望で釣り客が駐車できないようにするため。県からの賠償は3万3千円……。

 ひどい話です。入れないようにするならカラーコーンを立てるなり、鉄パイプで柵を作るなりすればいいだけの話。なぜ、事故につながる対策を取ったのか。バイクだったら死にますよ! Aさんの怒りもごもっとも。

 この話を聞いて思い出したのが、1993年6月の朝に起きた自分自身の事故です。大学の1限の授業に出るべく、柵で囲まれた道路脇の工事現場を自転車で通った時のこと。

 突然自転車の前輪が「カシャッ」という音とともに急停止、後輪が跳ね上がり、私は道路に投げ出され顔面強打。道に飛び出た太い針金が前輪のスポークに一瞬にして絡まったのです。こめかみからは流血し、吹っ飛んだメガネは完全破壊。そのまま授業に出たのですがクラス中騒然。

 帰り道、現場に貼られたプレートから管理者が小平市役所だと分かりました。関連部署に電話をし、メガネ代を弁償するよう言うと、B建設に委託しているからそちらに連絡するよう伝えられます。同社に連絡するとC造園がその作業をしていたから同社に連絡するよう言われました。

 C造園は「キチンと管理していた」と言うも、「針金が出ていたのは事実。小平市役所とB建設は貴社の責任と言っている」と伝えたら「はいはい、メガネ代弁償しますから領収書持ってきてください」と渋々言われました。

 普段は激安メガネ店へ行くのですが、この時ばかりは安くはないイワキのメガネへ行き、気に入った丸いフレームがあったので、高い極薄レンズを入れてもらいます。店員に「もっと高くしてください」と言ったら色を入れればいいと言われ茶色くし4千円高くなりました。そして4万2千円也の領収書を持ってC造園へ行くとブスッとした男から「はい、どうぞ」と現金を渡されたのでした。ちなみに今かけてるメガネは3300円です。

 4月1日から自転車のヘルメット着用が「努力義務(なんだこの言葉!)」になりました。「THE TIME,」(TBS系)は3日、東京・練馬区の光が丘団地では100人中10人が着用していたことを報告。

 この割合が今後どうなるかは分かりませんが、最寄り駅まで自転車に乗る人にとっては学校・職場まで持って行くのは厄介なこと。せっかく整えた髪も乱れますし、買い物途中に盗まれるのもイヤだな、となんとなく尻すぼみになっていくのでは。マスクでもよく分かりましたが、結局「他人がやってるかどうか」が「自分がやるか」の判断基準なのです。ただ、ヘルメットは大事ですよ。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2023年4月20日号掲載

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