稲葉延雄・NHK新会長が力を入れる「改革の検証」って何?「前会長の劇薬で組織がボロボロになりつつある」

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 4月11日、NHKが執行部人事を発表した。併せて、NHKの稲葉延雄会長(72)もコメントを出した。《今回の執行部人事では、会長である私に課せられた役割である「改革の検証と発展」に向けた検討作業をさらに加速させるため》――。稲葉会長は今年1月の就任以来、事あるごとに「改革の検証」を打ち出している。いま、NHKで何が行われようとしているのか。

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 まず、稲葉氏のNHK会長就任からの経緯を見てみよう。

●1月25日:稲葉新会長は就任会見で「私の役割は改革の検証と発展」、「安心して職務に専念できるような温かみのある人事制度にしたい」と発言。

●3月1日:「改革の検証と発展へ」と題した職員向けメッセージを発信。

●3月15日:人事制度改革などを検証するチームを立ち上げたことを発表。

●4月11日:執行部人事発表。

 執行部人事では「役員の担当」も添えられており、稲葉会長は「全体統括」と「改革の検証と発展統括」、井上樹彦副会長(65)は「会長補佐」と「秘書業務統括」、さらに「改革の検証と発展統括補佐」とある。井上副会長の担当は筆頭が「会長補佐」なので、「改革の検証と発展」の統括補佐は不要ではないのだろうか。経営企画局の関係者は語る。

「それほどまでに“改革の検証”を前面に打ち出したいということでしょう。“改革”とは、前田晃伸前会長(78)が推進した“スリムで強靱”なNHK改革のことです。新会長が就任早々、前会長が行ったことを否定するのは、異例中の異例です」

NHKはボロボロに

 みずほフィナンシャルグループの社長と会長を経て2020年にNHK会長に就任した前田氏は、BS放送の統合などによる経費削減や不評だった訪問営業の縮小を打ち出した。さらに、人事制度も年功序列の見直しに着手。従来は50代後半が中心の地域放送局長のポストに、40代の職員が就くようになったという。

 一方、稲葉会長は日本銀行の出身だ。2代続けての銀行マンの会長就任である。当初はスリム化路線を引き継ぐ方針を示していたが、就任後は前記の通り「改革の検証」のオンパレードである。

「前田氏ほどNHKの組織や人事に手を突っ込んだ会長はいませんでした。特に人事で唱えた“縦割り組織の弊害を是正する”というスローガンは聞こえはいいですが、この劇薬のせいでNHKはいまボロボロになりつつあるという声が出ています」

 どういうことだろうか。

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