音楽会や観劇を自粛していたら長生きできない…免疫力の維持に必聴の作曲家の名前は

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ストレス軽減には精神安定剤より音楽

 埼玉医科大学短期大学名誉教授の和合治久氏は、副交感神経を刺激する音の要素を多くふくむ曲を20~50代の男女20名に聴かせ、前後の変化を観察する実験を行っている。そこでは、クラシック音楽を聴いたのちに手の甲の温度が上昇し、抗体の一種のIgA(免疫グロブリンA)の分泌量が増え、ゆったりした気分(非活動的快)が増し、反対に、ネガティブな気分(不安、抑うつ)、身体愁訴(肩こり、目の疲れなどの自覚症状)は減退した、という結果が出ている。

 カリフォルニア州立大学バークレイ校の科学研究センターも、音楽の力を科学的に分析した研究結果を発表。音楽にはストレスを解消する力があり、音楽を聴くと身体が落ち着くということを立証している。たとえば、外科手術を受ける患者は、手術前に精神安定剤を服用するよりも、音楽を聴いたほうがストレスはより軽減されることがわかったという。

 さらには術中や出産の最中などでも、音楽を聴いていた患者は痛みを感じることが少なく、音楽は「強力は鎮痛剤」だとわかったという。和合氏の研究にも出てきたIgAも、音楽を聴いたのちに驚くほど増加していたという。

音楽を聴くとNK細胞が活性化

 こうした実験は、コロナ禍を経験したうえで行われたものではない。上記はいずれもコロナ前の実験結果である。「日本老年医学会雑誌」には、2001年3月の時点で、「音楽療法によるナチュラルキラー細胞活性及び細胞数の変化」に関する報告が掲載されている。

 ちなみに、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)とは、全身をまわってがん細胞やウイルスに感染した細胞などを見つけて攻撃するリンパ球で、免疫細胞の要。特別養護老人ホームの入居者19名を対象に音楽療法を行った結果、音楽を聴いた1時間後には、NK細胞活性に統計学的に優位な上昇が認められたという。

 こうした研究結果は枚挙にいとまがないのだが、なかでも具体的なのが、帝京大学医学部外科准教授(当時)だった新見正則氏による「マウスとオペラ」の実験で、これは2013年にイグノーベル賞の医学賞を受賞している。人々を笑わせ考えさせてくれる研究にあたえられるこの賞は、パロディのように誤解している人もいるが、ハーバード大やマサチューセッツ工科大の教授ら複数の選考委員会の審査を経て授与されている。

 その内容は、心臓移植をしたマウスにさまざまな音楽や音を聴かせた結果、オペラを聴かせたマウスの生存期間がいちばん延びたというものである。

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