国の分断を回避するために今、アメリカが考えていること 世論調査で浮き彫りになる米国人の変化
分断回避の苦肉の策として…
思い起こせば、1930年代の米国も社会の分断にあえいでいたが、皮肉なことに、起死回生の機会を提供したのは第二次世界大戦だった。日独伊という「強大な敵」が登場したことで、米国社会は一致団結することができたという経緯がある。
今回、その役割を演じるとすれば、中国をおいてほかにないだろう。
ピュー・リサーチ・センターが4月12日に公表した世論調査によれば、「中国は敵だ」と回答した割合が38%となり、昨年から13ポイント上昇した。
中国製品の流入のせいで雇用を奪われた苦い経験を有する中高年層に加え、18歳から29歳までの若い世代でも「中国を好ましくない」と回答した割合が急増していることも特徴的だ。コロナ禍で中国に留学する米国の若者が激減するなど草の根レベルの交流が劇的に縮小していることが影響していると考えられる。
ワシントンでも対中強硬論のみが超党派的な支持を得られる傾向となっている。
中でも注目すべきは、議会下院は3月27日、政府に対して国際機関などで「発展途上国」とされている中国の立場を変更することを求める法案を全会一致で可決したことだ。
所属政党の拘束が弱い下院では、 法案が全会一致で可決されることは珍しく、1941年の日独伊に対する宣戦布告も全会一致ではなかった(4月14日付日本経済新聞)。中国に対する米国社会の敵意が空前のレベルに達していると言っても過言ではない。
一方、中国の習近平国家主席も公の場で米国を名指しで批判し、対決姿勢をアピールするようになっており、「中国を未曾有の脅威」とみなす米国の世論をますます硬化させるという構図となっている。
国の分断を回避するための苦肉の策として、米国は今後も中国との対決姿勢を続けることが予想されるが、心配なのは両国の間で意図しない衝突が起きるリスクが日に日に高まっていることだ。
米中関係は危険な領域に入ってしまったのではないだろうか。
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