巨人が暗黒時代に突入も…ベテラン補強は“完全に裏目”、原監督が迫られる厳しい決断

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かつての“輝き”を失ったベテランたち

 長野と松田は、野球に取り組む姿勢といったプレー以外での貢献度を期待して獲得したという部分はあるだろう。とはいっても、やはり一軍での結果を残さなければ、立場が危うくなるのは当然だ。

 苦しむ選手は、この2人だけではない。坂本は開幕から22打席ノーヒットが続くなど精彩を欠いている。怪我から復帰した梶谷は、打率2割台前半と低迷し、4月17日に一軍登録を抹消された。さらに、彼らの下の世代のベテランも、丸佳浩は打率1割台、小林誠司はノーヒットと低迷し、かつての“輝き”を失っている(4月18日試合終了時点)。

 丸は「スロースターター」であるため、ここから状態を上げてくることが期待できるかもしれないが、坂本や梶谷、小林は、ここ数年の成績を見ても、完全に“下り坂”という印象は否めない。他球団のベテラン選手と比較しても、大島洋平(中日)や秋山翔吾(広島)、宮崎敏郎(DeNA)らが主力として活躍しているのは対照的だ。“高給取り”である巨人のベテラン選手が揃って機能しないとなれば、首脳陣への風当たりが強くなるのも致し方ないだろう。

「ベテランがダメなら、若手にチャンスを与えるべきだ」。こうした巨人ファンの声は、日に日に大きくなっている。過渡期をむかえたチームのなかで“救い”は、昨年新人王に輝き、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で活躍した「守護神」の大勢を筆頭に、ここ数年のドラフトで入団した選手に楽しみな存在が多いことだ。

下位指名や育成選手に「化けたら、面白い選手」

 投手は、昨年8人がプロ初勝利をマークして話題となった。今年も大阪桐蔭出身の横川凱や、松商学園出身の直江大輔、明徳義塾出身の代木大和が一軍の戦力として台頭している。二軍では、東海大相模出身の石田隼都や、桐蔭横浜大出身の菊地大稀、育成ドラフト1位のルーキーで、明星大出身の松井颯が結果を残している。

 一方、野手では、中京大中京出身の3年目、中山礼都と、ドラフト4位ルーキーで、創価大出身の門脇誠が二遊間で起用されることが増えた。二軍では、ドラフト2位ルーキーで、慶応大出身の萩尾匡也や、常総学院出身の2年目、菊田拡和、二松学舎大付出身の3年目で、身長2メートルを誇る秋広優人が主力選手として活躍中だ。

 数年前と比べて、「23歳以下の若手」に楽しみな選手が増えていることは間違いないだろう。これには、前述した「三軍制」の導入に加えて、“ある選手”の成功が大きく影響しているのではないかという。

「それは、巨人の若きエースに成長した戸郷翔征です。戸郷は、変則的な独特のフォームなので、他球団の評価が低くかったのですが、巨人にドラフト6位で指名されてプロ入りしました。早くも2年目に、9勝(6敗)を挙げて、一軍の戦力になりましたね。戸郷が成功したことで、(巨人のスカウティングが)弱点よりも長所を見ようという流れになったように感じます。今、二軍の正捕手になっている山瀬慎之助は、肩がとにかく素晴らしくことに加えて、徐々に打力がついてきました。下位指名や育成選手には『化けたら、面白い選手』が増えていますね」(前出の球団関係者)

 巨人は“常に勝ちが求められる球団”だとはいえ、実績を持つベテランに頼っても勝てない状況が続くのであれば、思い切って、若手に切り替えて、チームを再建する方向に舵を取るべきだろう。原監督は、今後どんな決断を下すのか、注視していきたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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