【NHK】タモリ、鶴瓶と昵懇の名物プロデューサーが報道と番組のトップに 前会長の改革失敗で白羽の矢

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前田改革で落ちた視聴率をどう回復させるか

 かなり視聴率を落とした。PUT(総個人視聴率)も微減しているが、NHKの下げ幅はそれどころではない。全日帯が2022年1月第2週の個人3.7%(世帯6.9%)から2023年4月第2週は個人2.6%(世帯4.8%)に。大幅ダウンだ。プライム帯は個人5.0%(世帯8.8%)から個人4.0%(世帯7.2%)。やはり大きく落ちた。
 
 個人視聴率の1%は関東地区で約42万人だから、プライム帯の場合、NHKは僅か1年3カ月で関東地区の視聴者42万人を減らしてしまった。今年10月から受信料が値下げされ、地上波のみの契約は月額1100円(125円値下げ)、衛星放送も視聴できる衛星契約は月額1950円(220円値下げ)になるが、観る番組が減ってしまっては、値下げにどれだけ意味があるのだろう。

「ガッテン!」など高齢者に愛された番組の打ち切りが視聴率ダウンに影響しているのは間違いない。なにしろ2022年2月2日の最終回の視聴率は個人7.4%(世帯12.7%)もあり、今月16日放送の大河ドラマ「どうする家康」の個人6.8%(世帯11.4%)より上だったのだ。

 局内には「テレビ離れの進む若者にも観てもらうための改革が必要だった」という声もある。確かに「ガッテン!」は視聴者の多くが50代以上だった。

 ただし、受信料の金額は20代も70代も変わらないのである。スポンサーと株主の意向に沿う形でコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)を獲らなくてはならない民放とは事情が全く異なる。

 若い視聴者のため、観たい番組が減っているのに、受信料を払えと言われたら、年金暮らしの高齢者はたまらないだろう。また、せっかくつくった若年層ターゲットゾーンも若者の視聴率が上がらない。4月第2週の場合、若年層ターゲットゾーンの全番組が、コア視聴率が1%に届かなかった。

NHKは変わるのか

 稲葉延雄会長は危機感を抱いているようで、これまでに「コンテンツの質を高める」「つくる側が安心して制作に専念できるようにする」と語っている。

 そこで白羽の矢が立ったのが山名氏だ。NHKプロバー組トップの井上樹彦副会長(65)が特に山名氏を買っているという。井上氏は元報道局編集主幹だが、編成局長の経験もあり、制作現場にも通じている。

 山名氏が期待されるのは不思議ではない。入局から僅か6年後の1995年に「鶴瓶の家族に乾杯」を立ち上げた。NHKらしい番組だ。「家族で観られる」「目を背けたくなるような場面が決してない」「地方のことが分かる上、笑える」。  

 今月10日放送分は個人3.8%(世帯6.7%)で健闘している。評価も高く、1998年には放送文化基金賞を受賞した。なにより、もう28年も続いている。

「ブラタモリ」でも山名氏の貢献は大きい。同番組は2012年に終了した後、「もう復活しないのではないか」との声が視聴者らの間で上がっていたが、山名氏らがタモリと事務所と交渉し、2015年に再開にこぎ着けた。

 ナレーターにはそれまでの女優・戸田恵子(65)に代わり、SMAPの草なぎ剛(48)を起用。この人選も好評を博した。2016年にSMAPが解散しても起用し続け、ジャニーズ事務所に忖度しなかった。

 さしあたって山名氏に求められるのは「家族に乾盃」「ブラタモリ」のような人気番組の開発にほかならない。近年、NHKには2018年に始まった「チコちゃんに叱られる!」(金曜午後8時)くらいしかヒット番組が生まれていない。その上、この番組もチーフ格のプロデューサーはフジテレビから独立した小松純也氏(56)だ。純粋なNHK生まれの番組とは言い難い。

 ヒット番組が出なくなったことにも前田改革が影響している。前田体制は番組の外注に積極的だった。制作会社に制作費を指定すればいいので、予算が削減しやすい。もっとも、外注が増え、つくる番組が少なくなると、局内のモチベーションは落ちる。

 NHKは変わるのか。新たな人気番組を生めるのか。キーパーソンは山名氏だ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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