キヤノンのドン・御手洗CEOに来年はあるのか?

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「再任否決」ギリギリまで追い込まれた

 3月30日に開かれたキヤノンの定時株主総会の取締役選任議案で、御手洗冨士夫会長兼社長CEO(87)の役員再任に関する賛成比率が50.59%にとどまったことが話題となった。「再任否決」ギリギリまで追い込まれた格好だったわけだが、追い込まれた理由が理由だけに来年は「再任否決」が通ること必至なのでは?との声があがっている。

 御手洗氏は1995年に社長に就き、2006年に私大(中央大)出身者として初めて経団連会長に就任したことに伴って会長となった。経団連会長退任後の12年に再度社長に就任。いったんは会長に退いたが、20年から3度目の社長を務めている。

 御手洗氏に関する賛成比率は過去に2度、70%台に落ち込むことはあったが、今回の落ち込みは異例だ。

「今回、再任賛成率が低かったのは、アメリカの議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)の方針が影響しています。ISSはキヤノンの取締役会に女性がいないことを理由に、反対を推奨していました」

 と、担当記者。

ガバナンスが働いていない

「もちろんさまざまな場面で男女比が俎上にあがる時代になっていますが、女性を増やしたからといってそれが業績アップにつながるかと言うと必ずしもそうではなく、なかなか悩ましい問題です」(同)

 確かに、キヤノンの取締役に女性は1人もいない。キヤノンほどの大企業としてはいささか驚きを禁じ得ないし、東証はプライム市場に上場する企業に対し、「1・2名の女性取締役の就任を義務付けている」(移行措置あり)ということもある。

「代表取締役は3人で御手洗氏のほか、田中稔三副社長(82)と本間利夫副社長(74)です。田中氏は28年、本間氏は20年超、取締役を務めており、会社の人事が滞っている、ガバナンスが効いていないとの指摘があります。まぁそれは誰が見ても明らかだと思いますが。ISSの主張する男女比の適正化というのは建前で、本音は御手洗体制への異議申し立てで、狙いは体制の刷新ではないかとの見方も浮上してきています」(同)

 ISSとは逆に、別の大手議決権行使助言会社であるアメリカのグラスルイスは賛成を推奨した。そのかいもあってか、御手洗氏は役員再任を果たすことになったわけだ。

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