「あの人が呪いばかけてしまった…」 青森放火殺人事件、「十文字家」をめぐる怨念の原点とは
複雑な家系図
そのため、事件の背景として「土地トラブル」が報じられているわけだが、十文字家のことを知る近隣の古老によると、確執の発端は数十年以上前にまで遡る。
今回亡くなった和子さんの義父にあたる十文字(杉山)三五郎という人物がいた。問題は、この三五郎さんのもとに、好彦さんの母親である、砂渡ヨシエさんが嫁いできたことにあるという。
三五郎さんには当時、正妻のA子さんと息子・政吉さんがすでにいたのだが……。
事情を知る古老は当時のことをこう語る。
「ヨシエは、コレ(性的なこと)がしたいからって三五郎のところに来たみたいなのよ。A子もまだ嫁さんとして居るんだから、不倫だよ。だから、俺から言えば、あの人(ヨシエ)が十文字家に呪いばかけてしまったんだかな……」
「なんでお前につがれなきゃならないんだ!」
三五郎さんとA子さんとの間に生まれた政吉さんは当時、まだ幼かった。そのうち、ヨシエさんは連れ子とともに十文字家に入り込んできた。A子さんはヨシエさんに追い出されたのである。この連れ子の一人が今回亡くなり、家宅捜索を受けた好彦さんである。そして今回亡くなった和子さんも連れ子の一人だ。
この後、政吉さんと和子さんは結婚して夫婦となる。これはヨシエさんが進めた話だという。つまりヨシエさんは実の娘と、事実上の夫の息子との縁談を決めたことになる。血のつながりはない者同士なので問題はないとはいえ、先の老婆によると、この件が好彦さんの恨みの原点となったのではないか、というのだ。
「ヨシエは自分の連れ子の和子を政吉とくっつけた。この時、好彦をかまど(分家)に出した。十文字家からいくらか土地などをもらったが、不本意に分家にされた形だ。十文字家に入り、自分が後継者になって資産を相続できると思っていたのにできなくなったというのも恨む要因だろう。和子さんは好彦と仲が悪く、“もう話したくない”と言っていたよ」
同じ連れ子として十文字家に入ったはずが、妹は本家の嫁となった。一方で自分は十文字家の資産を相続する資格を失った。そんな思いから妹とすら仲が悪くなったということのようだ。もちろん、それ以外の本家の人たちとの関係は推して知るべしだろう。
好彦さんの知人はこう証言する。
「利美さんと好彦が集落の酒の席で一緒になった際、利美さんがお酌したら、好彦が“なんでお前につがれなきゃならないんだ!”と言って、コップのお酒をバシャッと利美さんにかけた」
十文字家本家に対する「かまど」の激しい憎悪は、その後、「狂気の炎」と化してしまったのだろうか――。
4月20日発売の「週刊新潮」では、青森放火殺人事件の背後に潜む十文字家をめぐる積年の怨念について詳しく報じる。