自衛隊ヘリ消失に残された謎 専門家は「ヘリの種類が多すぎる」と指摘

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「空間識失調説」「エンジントラブル説」

 だが、陸自の事故で最も死者数が多かったのは、

「1968年2月に、松山駐屯地(愛媛県)付近で起きたヘリの墜落事故です。しかし、その数は8名で10名には及びません」(同)

 河野氏は今回の「消失」の原因について、

「管制塔との交信では異常はなかったのに、その2分後に消息を絶っているということですから、やはり突発的な事故としか考えられません。それが人的なものなのか、あるいは機体上の問題なのかは、今の状況からはわからず、どの可能性も否定できない状態です」

 と述べる。一方で、巷間語られる原因としてパイロットの「空間識失調説」については、

「過去の自衛隊の事故では、よく空間識失調が原因だとされましたが、これは夜間であったり、視界が不良であったりしたときに、上下がわからなくなった場合に起こりうるものです。今回は、水平線も見えているでしょうし、日中の出来事ですから、それは考えづらい」(同)

 さらに、「エンジントラブル説」についても、

「UH60JAは米軍のブラックホークを自衛隊仕様にした機体で信頼性が高く、二つのエンジンを積んでおり、1基が止まっても、飛行は可能です。また仮に万が一、同時に2基止まったとしてもオートローテーションといって、ヘリは浮力を維持し、ふんわりと海面に落下できたはずです」

 他方、「バードストライク」説に関しては、

「ヘリのローター・ブレード(回転翼)の耐性は高く、たとえこの部分を機関銃で撃たれても、簡単には撃墜されません。鳥が衝突した程度で壊れるはずがない」(前出・自衛隊関係者)

元陸将の見解は

 ならば理由は何か。陸幕調査第2課長や情報本部初代画像部長などを歴任した元陸将の福山隆氏はまず、

「今回の一報を聞いて真っ先に思い浮かべたのは、山本五十六連合艦隊司令長官の戦死です。第2次大戦中、前線視察のためニューギニアのブーゲンビル島上空を飛んでいた山本長官の搭乗機が、米軍機の攻撃を受けて撃墜されました。米軍は日本軍の暗号を解読して山本長官の視察を事前につかんでおり、周到に準備した上で狙い撃ちにしたのです」

 こう振り返ったうえで、

「こういう時はまず、すべての可能性を俎上に載せる必要がある。あらゆるシナリオを先入観によって排除せずにテーブルに並べ、後からエビデンスに基づいてひとつひとつ、潰していくべきです」

 と言い、以下指摘する。

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