「わいせつ教師」は防げる? 文科省のデータベース始動「よほどのことがない限り再交付はない」
4月1日、文部科学省は、児童・生徒へのわいせつ行為で教員免許を失った元教員の情報を全国の教委で共有するシステムの運用をスタートした。文科省の担当記者が言う。
「教員免許法では教員が懲戒免職となって免許を失っても3年が経過すると再取得が可能になる。わいせつ行為を働いてクビになっても、3年経てば再度免許を取り直し、他の自治体で教師として復帰することもできる。教員免許法を改正して免許の再取得を禁じればいいのですが、憲法22条には『職業選択の自由』が明記されている以上、それはできないのです」
また、わいせつ事件の中には、学校側が評判の低下を恐れて依願退職で済ませる例もある。私立学校でよくみられるケースだ。そんな状態でデータベースを稼働させても大丈夫なのだろうか。そこで文科省に聞いてみると、
「この問題は政府も重く捉えていまして、2年前に超党派による議員立法で『教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律』(わいせつ教員対策法)を成立させています。そこでは、性暴力によって教員免許を失った者への再交付は、自治体が設置した“免許状再授与審査会”の意見を聴かねばならないと定められている。審査会のメンバーは司法や医学などの専門家で構成されており、よほどのことがない限り再交付とはなりません。また、私立学校についても、性暴力が原因で教師を退職させる場合は、依願退職などではなく懲戒免職にするよう求めています」(担当者)
「これで安心というわけにはいかない」
データベースの整備も同法で規定された。法の施行から1年たっての運用開始だが、新しく発足したこども家庭庁では、学習塾や保育所といった施設でも「無犯罪証明書」の提出を義務とする法律を準備している。
性犯罪被害に詳しい上谷さくら弁護士が言うのだ。
「データベースの運用開始も含めて政府の措置は性犯罪防止の効果が期待できます。しかし、教育に関わる職業は教員だけでなく他にもある。法の網を広げられるのか、これで安心というわけにはいきません」
追いかければ闇に潜る。いたちごっこのような世界である。