独自のICTサービスで建築現場を変える――平野耕太郎(日立建機執行役会長CEO)【佐藤優の頂上対決】

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 建設機械の各部に取り付けられたセンサーが異常を感じると、自動的にスマホのアラームが鳴り、修理部隊が出動する――自動車よりも一足早く、建設機械ではIT化が進んでいた。さらにそのデータを積み重ねることで、事業全体が変わるという。建機業界の新たな地平を切り開く日立建機の挑戦。

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佐藤 埼玉県草加市の住宅街に、こんなに建設機械が集まった場所があるとは思いも寄りませんでした。

平野 弊社の本社は東京・上野にありますが、日本の拠点である日立建機日本の本社がここで、この地域の営業所も一緒になっています。

佐藤 御社のカラーであるオレンジ色のショベルが何十と並んでいるのは壮観です。

平野 ここでは、機械に販売先のお客様の社名を入れたり、お客様の要望を受けてちょっとした改造なども行っています。それを東京北部エリアや埼玉南部エリアにお届けしているんですね。

佐藤 古くからここにあるのですか。

平野 弊社が日立製作所から独立して53年になりますが、その当時からあります。そこは変わりませんが、一方、建設機械自体は大きく変わってきています。本日はお見せしたくて、ここまでお越しいただきました。

佐藤 楽しみにしていました。どうぞよろしくお願いいたします。

平野 従来、私どもメーカーの仕事は、品質のいい高性能の機械を作り、それを販売することでした。そして購入されたお客様にはオペレーターがいて、機械を自由に動かし、その能力を最大限引き出して仕事をしていたんですね。

佐藤 名人というのか、図面と寸分違わず、掘削をしたり法面(のりめん)を作ったりする人がいますね。

平野 それが最近は、オペレーターの高齢化が進む一方、なかなか新しい人が入ってこないという状況になっている。それに伴い、お客様からの要望も変わってきたんですね。単に機械の供給だけでなく、その後に機械をどう効率よく動かしていくかまで手助けしてほしいというわけです。そのための「ソリューション」も提供する必要が出てきました。

佐藤 この建設機械業界にも、少子高齢化や人材不足が大きく影を落としているのですね。

平野 従来からのお客様のご要望は、大きく四つあります。まずは安全性です。やはり土木建築業は危険が伴いますから、機械による事故を減らしたい。それから二つ目は、生産性。例えば、5日でやっていた仕事を4日でやりたい。2024年度から国土交通省の公共事業は、土曜日と日曜日を休みにすることになりました。いま日曜日は休みですが、土曜日は作業することがある。例えば水曜日に雨が降れば、土曜日は動きます。それができなくなる。

佐藤 いや応なしに効率性が求められてくる。

平野 そうです。それから三つ目は機械を動かす燃料代ですね。そのランニングコストをどう下げていくか。そして四つ目が環境対策です。

佐藤 どれが欠けても現場はうまく回らないでしょうね。

平野 こうした要望に応えつつも、工事現場で一番困るのは、機械が突発的に動かなくなることです。

佐藤 動いていることが前提ですからね。

平野 朝、現場に行ったらショベルのエンジンが掛からない。そうなると用意していたダンプトラックもコンクリートミキサーも止めなくてはなりません。また、そこに集めた作業員の仕事もなくなってしまいます。

佐藤 さしずめ外交の現場なら、通訳がお腹を壊してこられなくなったという場面ですね。

平野 これまでは故障する前に、オペレーターが「ちょっとエンジン音がおかしいな」とか「動きが違うな」ということに気が付いて、私どもに連絡してきたのです。でも熟練オペレーターが少なくなり、また退職したりして、そうしたことが減ってきた。また、機械自体も高度化して複雑になっていますから、修理も簡単ではない。お客様だけでは対応しきれなくなっているんですね。

佐藤 そもそも非常に専門性の高い仕事です。

平野 ですから私どもとしても、販売後もスムーズに機械を使っていただくにはどうしたらいいかを、考えなくてはならなくなった。それで取り組んできたのが、本日、お見せする「コンサイト(ConSite)」というサービスなんです。

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