【岸田首相襲撃】再び露呈した警備体制の穴 警視庁OBは「金属探知機や手荷物検査を徹底するのは無理」
なぜ所持品検査をしていなかった
関係者には戦慄が走ったにちがいない。15日午前、補欠選挙の応援のため、和歌山市の雑賀崎漁港を訪れていた岸田文雄首相に向け筒状のものが投げ込まれ、爆発した。和歌山県警は威力業務妨害の疑いで兵庫県川西市の木村隆二容疑者(24)を逮捕した。
「演説が始まってすぐでした。とっさに周囲にいたSPらが首相を防護盾で守り、現場から退避させました。昨年7月、奈良市内で選挙応援演説中の安倍晋三元首相が銃撃され死亡しており、警察庁は要人警護の体制を見直しました。警護を担う都道府県警が作成した警備計画を警察庁が審査することになり、今回も和歌山県警はその手続きにのっとり警備計画を立案しました。それでも、今回の事件が起きてしまった。首相は無事だったとはいえ、警備・警護体制は十分だったのかどうか、警察もさらなる検証が求められています」(社会部記者)
混乱する現場で木下容疑者を取り押さえたのが、68歳の漁師だったこともあり、警察のメンツが丸つぶれになってしまったかの感もある。事態を重く見た警察庁はすぐに全国警察に警備体制強化のため、警備実施にあたる警察官の増員や、現場での不審者に対する職務質問、そして所持品検査を行うことなどを指示した。
「今回の事件で、現場にいた人がテレビカメラの前で『持ち物検査はなかった』と証言しました。昨年の安倍元首相の事件以降、警護要則を改訂し、対策を強化したのは事実ですが、持ち物検査や金属探知機の導入は絶対ではなく、“必要に応じて”であり、強制するものではありませんでした。全国警察が一律に装備資機材を導入するのは無理なこともありますが、昨年7月の事件から1年もたっていないのに、またもや要人襲撃。なにかと批判を受けるのは仕方がないとしても、現場サイドから見ると難しい側面があることは事実です」(警察庁関係者)
要人警護において、日本警察が伝統としてきたのは「見せない警備」だった。政治家の場合、選挙期間中は自らの実績と主張を訴え、有権者と接する大事な時間である。そこに警察が前面に出てしまうのはよくない、との考え方からだった。
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