「教場0」 キムタクの存在感ばかり注目されるが、正統派ミステリーとしての評価はどうなのか

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木村拓哉の新境地

 麗華の火薬アレルギーに気づいたのは瓜原で、お手柄だったものの、事件はより早く解決できるはずだった。麗華は益野が拳銃を撃っている絵を、瓜原に渡そうとしていたからである。

 だが、瓜原は麗華が警察嫌いだと思い込み、気が引けてしまい、風間から命じられたにも関わらず、会わなかった。風間には「会った」とウソをついた。

 推理ではないものの、観る側に瓜原の行動の是非を考えさせた。答えはさまざまだろう。正解はないはずだ。風間も瓜原の行動を全否定している訳ではないようだ。第2話以降も指導するからである。

 情緒的な場面はほとんどなかったものの、最後は泣かせた。心因的理由から声を失っていた麗華が「パパ、待ってるね」とつぶやいたところである。無言でうなずく益野も哀しかった。

 感情を極端なまでに殺した木村の演技がいい。これまでの制作者は30代までの木村のイメージを維持することばかり考えていたのではないか。

 赤楚も魅力的。どこが一番良いのか考えていて分かった。目が10代のようだ。汚れがなく、澄んでいる。いくら稽古を積んでも出せない目をしている。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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