元カノから妻の“知られざる過去”を聞かされ、何かが変わった…そして、50歳夫が思ってしまったこと

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誰にも知られないよう…重ねた密会

 それがわかっていても、和宣さんは朋美さんと会うのをやめられなかった。茉希さんの疑いをかわしながら、ふたりは外で会うようになった。将太さんに知られたらどうするつもりだったのだろう。

「将太はけっこう関西への出張が多かったんですよ。あいつ、あのころバリバリ仕事をしていたから。出張だと聞くと、車で朋美の家に行き、車の中で愛し合うこともありました。娘がいるから遠くへは行きたくないと彼女はよく言ってた。一度だけ、ヤバいことがありました」

 マンションの駐車場近くに止めた車の中で愛し合っているとき、近所の人に見られてしまったらしい。彼はすぐに彼女を降ろしたが、そこへ警察がやってきた。

「危機一髪でした。警察には丁寧に対応しました。『未成年も通るかもしれない場所だから気をつけてください』と叱られ、一応、身分証明書も出した。危なかったですよね。将太が一日早く戻ってくる可能性もあるし、母がいないと思った娘が外へ出てくる可能性だってゼロではない」

 気をつけなければ。誰にも知られないように。それがふたりの合い言葉になった。コロナ禍になってから、テレワークになった和宣さんは、変わらず出勤している朋美さんとときどき会っていた。

「ホテルの部屋をワーキングスペースとして借りると、会社から補助が出たのでそれを利用していました。そこに朋美を呼ぶわけにはいかないけど、仕事をしているふりをして近くのラブホテルに行ったり。そのときも車が役に立ちましたね」

 車は毎回、朋美さんがきちんと確認している。ピアスが落ちていたら、茉希がどう思うかしらと言われてビクッとすると、朋美さんはニヤリと笑った。

「女性はどうしてああいうことを平気でジョークにできるのか……。ときどき、朋美にもてあそばれているような気がします。でも朋美とは離れられない。将太とも相変わらずときどき会っていますが、彼は何も気づいていないと思います。僕もドキドキしているけど、最近は慣れてきたというか。将太を裏切っているつもりはないんです」

 とはいえ、客観的に見れば、将太さんのことも茉希さんのことも裏切っていることにはなる。それが一般的な見方だ。だが、30年越しの恋が実った和宣さんの気持ちもわからなくはない。ふたりの情熱はすでに5年続いている。言い換えれば、それぞれの配偶者は5年にわたって裏切られている。誰の立場に立つかで見解は変わってくる。

「だからこそ、誰にも知られないようにしなくては」

「考えてもしかたのないことを考えるな」

 彼の長男は大学生に、次男は高校3年生になった。朋美さんの娘も大学生になった。これからそれぞれの夫婦関係はどうなっていくのか。

「ときどき将太と朋美がベッドにいると考えると、頭がおかしくなりそうになります。うちはもうレスが長い。朋美は『うちだってレスよ』というけど、将太の様子では仲がいいんですよ、あの夫婦。だからこそ僕は朋美から離れられない、離れたくないんです」

 最後は頭を抱えた和宣さんだが、「こういうことを言うと、朋美に笑われるんです。考えてもしかたのないことを考えるなって」と少しだけ笑った。

前編【高校時代の元カノが親友と結婚 ところが、その後のあり得ない展開に日々悩む50歳夫の本心】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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